たいむ【タイム】 五十にしてまだヒヨッコ 貴島豪【SPAC俳優 言葉をひらいて⑯】

気がつけばもう10月も中旬。そう、気がつけば、なのだ。
確かに年を重ねるにつれ、時がたつのが尋常ではなく早い。この現象を心理学的に表した「ジャネーの法則」によれば、1歳の時に感じた1年を365日だとすると、体感的には50代では50分の1、つまり7日ほどだということだ。ということは生き永らえるかは別として、100歳までにはもう20日を切っているということになる。
…まじか。
まるで中身が追いついてない。確か「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」と昔習ったはずだが、いまだそんな兆候はみじんも感じない。あ、ひょっとしたらまだ30代かも、と淡い期待で鏡の前に立つが、鏡は全く気を遣ってくれない。「人間五十年、化天の内をくらぶれば夢幻の如くなり」なんて「五十年」の下にちゃんと「(後半の)」と、注釈を付けておいてほしいくらいだ。
…だが待て待て。皆さん(?!)安心してほしい。これはあくまで「過ぎた」時間を感じる話。これから「過ごす」時間を感じることは別の話だ。
先日ご一緒した50代の能楽師さんの言葉を借りれば、50代はまだまだ「ヒヨッコ」らしい。そう、日々アップデートしながら、まだまだ先は長そうだ。
最後に、先日とある舞台で、30年共に舞台を踏んできた50代3人で、「皆に届け」と熱唱した「ザ・ブルーハーツ」の「夕暮れ」をお届けしたい。
幻なんかじゃない 人生は夢じゃない
僕達[たち]ははっきりと生きてるんだ
夕焼け空は赤い 炎のように赤い
この星の半分を真っ赤に染めた
それよりももっと赤い血が
体中を流れてるんだぜ
それでは、今度は劇場でお会いしましょう‼
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布施安寿香さんと貴島豪さんのリレー執筆は今回が最後です。次回からは、佐藤ゆずさんと渡辺敬彦さんが担当します。