地震予知 宇宙に可能性 静岡県立大の衛星、24年度にも打ち上げ

 地震発生直前に、地球を取り巻くように存在する電気を帯びた層「電離圏」でどのような変化が起きるかを探る県立大の研究が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証プログラム」に採用された。日本大と共同で超小型衛星「プレリュード」の作製を進めていて、2024年度にもJAXAのイプシロンロケットに搭載され打ち上げられる。電離圏の変化と地震発生の関連性は未解明な部分が多く、地震研究者も関心を寄せる。

開発中の超小型衛星の模型を手にする鴨川仁特任教授=5月下旬、静岡市葵区
開発中の超小型衛星の模型を手にする鴨川仁特任教授=5月下旬、静岡市葵区
超小型衛星での電離圏観測イメージ図
超小型衛星での電離圏観測イメージ図
開発中の超小型衛星の模型を手にする鴨川仁特任教授=5月下旬、静岡市葵区
超小型衛星での電離圏観測イメージ図


 研究を主導する鴨川仁県立大グローバル地域センター特任教授(地球電磁気学)によると、2000年代にフランスが行った研究で、マグニチュード(M)4・8以上の地震が発生する0~4時間前、地上から電離圏に届く電波の強度が弱くなる現象が確認された。地震の先行現象として、何らかの原因で電離圏の電子密度が高まり、電波が届きにくくなったとみられている。
 ただ、関連性を評価できるだけの十分なデータが得られていなかった。鴨川特任教授は「事前に地震発生を予測できる可能性」を感じ、研究を進めてきた。
 開発中の衛星は、長辺36センチ、短辺22センチ、高さ10センチの箱形で重さ約10キロ。折りたたみ式の棒(1・5メートル)2本の先端にセンサーがある。電離圏の最下部に位置する高度約80キロで、雷から発せられる電波の強度や電子密度の変化を観測する。地上で発生した一定規模以上の地震との相関性を探る。2年間続ける。
 県立大が観測やデータ解析、日本大が人工衛星の設計や開発を手がける。23年度は試作機を作り放射線や耐熱の試験を行う。
 鴨川特任教授は「将来的には電離圏で起きる先行現象から地震を予測する技術が確立できれば。設計は無償公開し、ほかの地震国でも役立てられるようにしたい」と意気込む。
 地震予知連絡会会長で名古屋大教授の山岡耕春氏は、現時点での電離圏観測による予測技術の実用化には慎重な見方を示しつつ、「今は評価できるだけのデータが不足していて、科学的な手法でデータを集める挑戦は意義がある」と語る。
東日本大震災時に異常観測 京都大「共同研究望む」  地震と電離圏に関する研究では、京都大の梅野健教授(通信工学)の研究グループが2011年の東日本大震災や16年の熊本地震の際、発生前に上空約300キロの電離圏で電子の密度が急に低くなる異常現象が起きたことを明らかにした。詳しいメカニズムは解明されていないが、衛星利用測位システム(GPS)からの電波を解析する手法で、電子の大移動が起き密度が低下したと分析した。
 現在、電波が電離圏で反射する性質を利用した別の手法でも観測していて、5月に能登地方で発生した最大震度6弱の地震で、発生約1時間半前から電子の大移動が見られたという。電離圏の観測から地震発生を事前に知らせる予測技術の構築を目指す梅野教授は県立大の研究について「われわれの研究成果との相関性が見つかれば電離圏での現象と地震発生の関連性が強く裏付けられる。共同研究も行いたい」と話す。

 

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