盛り土是正、5割未着手 全国調査 業者応じず代執行にも壁
熱海市伊豆山で2021年に発生した大規模土石流を受け実施された国の「盛り土総点検」で、各都道府県が昨年3月時点で災害防止措置が確認できなかったと報告した不適切盛り土462カ所のうち、約5割に当たる252カ所で是正工事が実施されていないことが25日、共同通信の調査で分かった。国や自治体による対策強化のきっかけとなった熱海市の大規模土石流は7月3日で発生2年となる。
多くの都道府県が、盛り土をした業者が工事の要請に応じないためなどと回答。多額の費用がかかる行政代執行にも踏み切れず、結果的に崩落の恐れのある盛り土が少なくとも1年以上にわたり半ば放置されている実態が浮き彫りとなった。
調査は5~6月に実施。各都道府県が22年3月までに「必要な災害防止措置を確認できなかった」と国に報告した盛り土について、今年5月10日時点の状況や是正の方法などを取材した。
静岡県は102カ所中66カ所、大阪府は62カ所中35カ所、埼玉県は57カ所中29カ所でそれぞれ是正工事に着手できていないと回答。千葉県は31カ所中3カ所しか工事に着手していなかった。崩落時に周辺の住宅などに影響が出る恐れがあるとの回答は計8カ所で、このうち5カ所は千葉県だった。
各都道府県の条例は、排水設備設置などの災害防止措置は盛り土行為者の義務と規定。工事に着手できない理由は「盛り土業者が工事の要請に応じないため」「業者と連絡が取れないため」などが多かった。
一方、是正工事に着手していたのは計176カ所で、方法は「盛り土行為者が是正」が約8割に上った。一時的に税金を投入し、自治体が代わりに土砂を撤去する行政代執行は宮城、静岡、兵庫の3県の計5カ所にとどまった。