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「金融緩和修正は慎重」元日銀理事の早川氏、サンフロント21懇話会総会で講演

 三島市で29日開かれた静岡新聞社・静岡放送の「サンフロント21懇話会」の総会では、元日銀理事で東京財団政策研究所主席研究員の早川英男氏が講演した。4月に就任した植田和男総裁(牧之原市出身)率いる日銀の金融政策に関し「直ちに金融緩和の大枠を転換することは考えにくい。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の見直しなどは時間をかけて慎重に進める可能性が高い」との見通しを示した。

経済情勢や金融政策をテーマに講演する早川氏=三島市内のホテル(東部総局・田中秀樹)
経済情勢や金融政策をテーマに講演する早川氏=三島市内のホテル(東部総局・田中秀樹)

 理由として、日銀が目指す2%の物価上昇の定着が確認されていないことを挙げた。企業の賃上げが一過性に終わり、賃金上昇に伴うインフレよりも実質賃金減少に伴う景気の下振れを懸念していると説明。一方で、女性や高齢者の労働参加率上昇が止まり、人手不足を補いきれなくなれば賃金上昇率は上がると分析。そうなれば2%の物価上昇は「遠くはない」と語った。
 学生時代から知る植田総裁について、市場との関係を重視し、市場が予想しない政策変更「サプライズ」を重ねた黒田東彦前総裁とは正反対だと強調。金融政策決定会合のコンセンサスも重視すると話した。過去の金融緩和策の検証実施を決めたことに触れ、「利上げが早すぎるリスクと遅すぎるリスクのバランスを考え、あえて遅れ気味の金融政策正常化を目指すのではないか」と話した。
 足元の日本経済にも言及し、先行してウィズコロナに移行した他の主要国に比べて遅れているものの、「緩やかな景気回復軌道は維持できている」と述べた。ただ、耐久財や食料品といった「もの」に比べて遅れているサービス需要の回復が鈍いと景気後退論が強まる恐れがあると指摘した。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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