自主防、増える防災委員 風水害頻発で役員負担分散 静岡県調査 

 防災の啓発や避難所運営などを担う防災委員の人数が増加傾向であることが24日、静岡県の自主防災組織実態調査で分かった。県は台風15号など風水害が頻発する中、役員数を増やして組織内で負担の分散を図ろうとする動きだと分析する。一方で、自主防の役員で消防団や防災関係機関を経験した人は減少し、人材や知識不足が懸念されている。

防災委員の配置人数について自主防災組織実態調査の結果
防災委員の配置人数について自主防災組織実態調査の結果
自主防災会規約の改正について説明する前田万正会長(右)=4月下旬、静岡市葵区
自主防災会規約の改正について説明する前田万正会長(右)=4月下旬、静岡市葵区
防災委員の配置人数について自主防災組織実態調査の結果
自主防災会規約の改正について説明する前田万正会長(右)=4月下旬、静岡市葵区


 防災委員は会長や副会長をサポートし、災害時には地域住民の中心となって活動する。2022年度に複数の防災委員を配置している割合は83・6%と過去最高だった。内訳を見ると4人以下の割合は37・5%。前年度の47・5%から10ポイント減った。5~9人は26・6%、10~19人は19・9%、20人以上は15・2%だった。いずれも前年度比で2~3ポイント程度上昇し、防災委員の配置数が増えている。
 県危機管理部の山田勝彦危機報道官は「防災委員の人数に明確な基準はない」としつつ、「避難所運営は住民が交代でやる必要があり、多くの人が防災委員を務めることで経験を積んでほしい」と強調する。
 自主防の役員で消防団などの経験者数が含まれているかを問う質問では「いない」との回答が54・9%に上り、2012年度から15ポイント増えた。防災訓練を実施する上でハードルとなっている問題で「ノウハウが不足している」を選んだのが48・5%と最も多かった。
 アンケートは22年12月~23年3月、全5158組織に対して行い、回答率は35・7%だった。  経験者やノウハウ不足 課題 地域実態に応じ 活動簡素化  災害時に共助の要となる自主防災組織。県内では自治会と自主防が同一組織の割合が9割以上を占め、業務の負担や再雇用などに伴う担い手不足が長年の課題となっている。地域の実態に合わせ、活動や組織体系を見直す動きが進んでいる。
 静岡市葵区の中山間地にある清沢地区は2022年4月、自主防災会の規約を見直した。同地区は14自治会からなり、高齢化率が5割を超えて人口減少も加速する。若い世代は地区外で仕事をしているため災害時に活動できる人が少ない。
 規約改正では災害対策本部に置かれる総務や情報、救護、炊き出しなどの班を廃止。以前は、各単位自治会から班長と班員を選出していたが、事前に役割を決めないことにした。一方で新たな規約では情報伝達、避難誘導、救出・救護など訓練の実施を明記した。
 同地区自治会連合会の前田万正会長(66)は「発災時に班長や班員の全員が集まれるとは限らない。事前に決めるよりも、訓練を行い、最低限の人材でも臨機応変に対応できる組織が必要」と強調する。
 湖西市は昨年12月、自治会役員を対象に活動の在り方や担い手確保をテーマにした研修会を開いた。研修会を受け、太田自治会は例年実施していた役員の研修旅行を取りやめ、災害時に役立つパッククッキングの体験会を企画した。藤井英利前会長(69)は「自治会に求められる役割の中で防災が最も重要」と考える。同市では負担軽減のため、役員経験者によるサポーターズクラブを設けて、行事や防災訓練の企画などを支援している自治会もある。

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