静岡県産一茶 生産量最低水準 4月以降の生育鈍化、摘採面積減響く

 静岡県内の一番茶生産が一部地域を除いて終わった。4月以降の朝晩の冷え込みといった気象条件や摘採面積の減少が響き、生産量は過去最低水準まで落ち込むとみられる。全国で展開される新茶販売が低調に推移する中、日本一の生産地として消費者のニーズに沿った茶づくりの重要性が一段と増している。

静岡県内産一番茶生産量と平均単価の推移
静岡県内産一番茶生産量と平均単価の推移
黒色の覆いをかけた茶園で摘採する青羽根製茶生産組合茶工房たくみの生産者。茶葉は海外にも出荷されている=5月、藤枝市岡部町
黒色の覆いをかけた茶園で摘採する青羽根製茶生産組合茶工房たくみの生産者。茶葉は海外にも出荷されている=5月、藤枝市岡部町
静岡県内産一番茶生産量と平均単価の推移
黒色の覆いをかけた茶園で摘採する青羽根製茶生産組合茶工房たくみの生産者。茶葉は海外にも出荷されている=5月、藤枝市岡部町

 今年は2月下旬以降に温暖な気候に恵まれ、各地の茶園で新芽が早いペースで育ち、静岡茶市場(静岡市葵区)は新茶初取引を史上最速の4月13日に行った。ただ4月上旬以降に一転、生育が鈍化し、一番茶の収穫はピークらしいピークを迎えずに終わった。同市場で1日当たり本茶取扱量が4万キロを超えた日数は、前年の7日に対し、今年は4日にとどまった。
 茶農家の高齢化による廃園、昨年9月の台風被害に伴う摘採面積減少も減産の一因となった。
 販売面では贈答用など高価格帯商品の販売が伸びず、前年からの繰り越し在庫を抱える製茶問屋は仕入れに慎重な姿勢を堅持した。
 JA静岡経済連によると、県内産一番茶の約4割を扱うJAでは生産量が前年比約15%減、販売単価は前年並みとみている。新型コロナウイルス禍で過去最低を記録した2020年(9420トン)を下回る可能性がある。
 新茶商戦が盛り上がりに欠けた一方、茶葉の香りや色合いへの評価は総じて高く、5月下旬に生産が始まる二番茶への期待は高い。重油や肥料代の高止まりに起因するコスト増で営農環境は厳しく、経済連の清水直也茶業部長は「買い手の要望に沿った良質な茶づくりを進めてほしい」と話す。  高品質かぶせ茶 価格安定 藤枝・岡部「欲しいお茶作る努力」  急須で茶をいれる購買層減少に伴う消費低迷が続く。販路の確保が必須となる中、藤枝市岡部町に高品質な茶づくりが評価されている茶工場がある。
 龍勢グリーン(同市)は収穫前の茶園に一定期間覆いをかける「かぶせ茶」づくりを長年手がけ、全国茶品評会の農林水産大臣賞に輝いた経験もある。
 かぶせ茶は直射日光を遮ることで生まれる濃いうまみやまろやかな味わい、鮮やかな色合いが特徴。栽培法や肥料の研究などを重ねて品質を高めたことで、今年の取引価格も終盤まで安定した。朝比奈正雄代表(69)は「みんなが欲しいと思うようなお茶を作る努力を続けていく」と話す。
 青羽根製茶生産組合茶工房たくみは、20日ほど覆いをかけて作る玉露の生産に力を注ぐ。海外市場からの評価が高く、製茶問屋を通じた輸出が拡大しているという。

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