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富士に外国客船初寄港 にぎわい創出の契機に【東部 記者コラム 湧水】

 富士市の田子の浦港に4月、米国企業チャーターの客船「スターブリーズ」が着岸した。1961年の開港以来初めてという外国客船の寄港を一目見ようと、港には多くの周辺住民が訪れ活気づいた。同港には10月にも国内クルーズ客船が発着する予定。東部地域の産業を支える工業港のイメージが強い同港だが、今回の寄港を契機に、周辺のにぎわい創出の役割も果たしてほしい。
 2018年、市や商工会議所などでつくる官民組織「田子の浦港客船誘致委員会」が発足し、受け入れ態勢の構築や歓送迎事業の準備を進めてきた。田子の浦港は、港口航路が狭く大型船が入港できないため、受け入れできる客船には制限がある。今回寄港したスターブリーズも全長159・4メートル、乗客定員342人の小型客船。港湾関係者は「“爆買い”に代表されるような経済効果よりも、地元の活気づくりや観光資源のPRという文化的な側面に期待していた」と話す。
 田子の浦港周辺には、新鮮な生シラスが味わえると県内外から観光客が訪れる「田子の浦港漁協食堂」や富士山を望む展望タワーがある「ふじのくに田子の浦みなと公園」など人気スポットが多い。ただ「それぞれの場所は盛り上がっていても港全体では活気に欠ける」(市職員)という。そもそも同地域は、富士山と海が同時に楽しめるという抜群のロケーション。今後、周辺の一体的な環境整備が進み、さらなる活性化や観光誘客につながることを期待したい。
 寄港当日、港でカメラを構えていた男性に話を聞いた。「地元にこんなに大きな客船が来ることはなかったから誇らしい気持ち」。地域住民にとっては、これまで工業港として眺めていた港のイメージが塗り替わった瞬間だっただろう。10月には客船「にっぽん丸」が同港を発着する。同港で客船が発着するのも開港以来初めてという。さらに同客船は富士市内の企業がチャーターするため、乗客も富士市民が多い。このチャンスを生かし、地元住民を盛大に巻き込んだ企画に期待したい。市民が港に愛着を持つことが、にぎわい創出の第一歩のはずだ。
 (富士支局・沢口翔斗)

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