がんなど治療・予防へデータ活用提唱 静岡済生会病院 臨床検査技師ら確認 50年保管検体でも遺伝子解析可能

 静岡済生会総合病院(静岡市駿河区)臨床検査技師らの研究グループが、50年前から病院に保管されてきた検体で、病気の治療や予防に役立つ遺伝子解析ができることを確認した。研究を主導した斎藤彩香さん(43)は「経年劣化していたが、方法次第で50年前の検体からも遺伝子の情報を得られる。その意義は大きい」と、がんなどの治療や予防に向けて各病院での検体の保存方法改善やデータの活用を提唱している。

約50年間保管され、今回の研究に使われた病理検体
約50年間保管され、今回の研究に使われた病理検体

 同病院はがんなどの患者から採取して病理検査に使った組織の塊(ブロック)をろうに固めて検体として保管してきた。約50年間に作成された検体は90万個以上と推定されるが、温度や湿度が管理されていない倉庫で保管されていた。
 今回の研究では1971年に患者から採取され、同病院で保管されていた30検体のがん組織などの塊を薄く切って調べた。浜松医科大の協力で、悪性度の高い検体の切片から遺伝子情報を含むDNAやRNAを抽出、増幅した。遺伝子の配列も解析し、がんにつながる遺伝子の変異を見つけることができた。
 遺伝子解析は50年前にはできなかったため、保管されている検体を解析すれば珍しい症例が見つかって治療薬の開発に役立ったり、がんを発症した場合に遺伝子の変異が理由なのかを調べられたりする可能性がある。
 斎藤さんは「検体の保管状況が悪く、想定以上に劣化が進んでいた」と説明。「各病院に大量の病理検体が残されているが、保管状況は病院ごとに異なる。遺伝子解析に活用できるようになれば検体の利用価値は高まる」と述べ、保管やデータ共有の在り方を議論すべきだと指摘している。

 病院に保管された病理検体 がんやポリープなどの病理検査に使った検体。日本病理学会は半永久的に保管するよう提言しているが明確な期間は決まっておらず、保管方法も統一されていない。プライバシー保護を前提に多くの病院で廃棄せずに残される一方、保管場所の確保が困難になりつつある。近年、がん治療などで一人一人の遺伝子の特徴に合わせた治療が可能になり、過去の検体の重要性は増している。

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