社説(5月10日)コロナ融資返済 中小に丁寧な目配りを

 新型コロナウイルス禍の中小企業支援策として政府が講じた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が5月以降、本格化する。静岡県内で同融資を利用した中小の資金繰り準備は万全か。今年の県内企業倒産件数は前年を大幅に上回るペースで推移している。金融機関と行政は中小へ丁寧に目配りをしてほしい。
 コロナ下のモラトリアムはいよいよ終焉[しゅうえん]へと向かう。中小企業は経営の健全化を進めつつ、金融機関や行政は本県産業の持続可能性を高めるための中小支援に一段と力を尽くさねばならない。
 ゼロゼロ融資は、政府系金融機関が2020年3月から先行し、民間金融機関も同年5月から手がけた。最大3年間とされた金利支払いの据え置き期間が終了するため、返済はこれからが本番となる。
 物価高と価格転嫁の対応遅れで地域中小の経営は苦境に立っている一方、行動規制緩和を背景に社会経済活動は回復傾向が続いている。そこで政府は新たな融資への借り換えなどの支援策を打ち、返済負担を一時的に軽くしている間に、当該の中小に経営再建を促す構えだ。
 新たな支援策は、融資の保証として信用保証協会に支払う保証料が基本0・2%に抑えられている。また資金を設備投資にも充てられるよう、保証限度額はゼロゼロ融資を上回る1億円に設定される。
 ただ申し込み時には、出口戦略を盛り込んだ「経営行動計画書」の提出が求められ、将来必ずやってくる返済に堪えうる収益力に高める必要がある。省力化や自動化による生産性向上、消費者の行動変容に応じた事業変革、新事業への参入といった具体策を固めるため、日ごろから取引する地域金融機関と相談を入念に重ねなければならない。
 一方、信用調査の帝国データバンク静岡支店によると、コロナ禍の影響で倒産した県内企業が4月に200社を超えた。今年は2、3月とも10社を上回り、20年3月以降の最多ペースで毎月積み上がっている。企業倒産は当面、高水準で推移するとの懸念が強まっている。
 関係者には、借り換えなどの支援策を使わずに廃業を選ぶ事例が増えるとの見方もある。資金繰り悪化に加えて経営者の高齢化や承継難、人手不足といった課題も抱え、事業再生に割くモチベーションを既に持ち合わせていない企業が少なくないという。
 だからこそ地域金融機関の伴走型支援が欠かせない。悩める中小零細の経営者に寄り添いつつ企業個々の強みを引き出し、課題解決へと導き、経済の新陳代謝以上の淘汰[とうた]が起きぬよう、1社でも多くの事業高度化を成し遂げたい。

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