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社説(5月2日)「維新」が勢力拡大 野党共闘 不透明感増す

 統一地方選で勢力を大幅に拡大した日本維新の会。野党第1党の立憲民主党に迫る当選者を出し、衆参5補選では和歌山1区を制した。次期衆院選は全国政党化を目指して全選挙区で擁立作業を進めると宣言し、選挙での野党共闘が不透明になってきた。
 維新に補選の一角を崩された自民党だが、目標を上回る4勝1敗だったとして岸田文雄首相は早期の衆院解散を見極める構えだ。
 維新は安全保障政策や憲法改正で時に自民以上に保守色を出し、自民、公明両党の連立政権には是々非々で対峙[たいじ]する。特定の支援団体に依存せず「改革保守」と称され、革新系やリベラル(自由主義)への期待感が薄れた有権者の選択肢になっている。
 改革保守の維新が非自民票の受け皿を担う現状は、政党政治の機能低下と、有権者に漂う政治への閉塞[へいそく]感を映していると言えよう。
 維新は大阪府、大阪市、奈良県の首長選を制し、統一地方選では東京都内で70人を擁立し、67人が当選。神奈川や埼玉県でも議席を伸ばした。現職と合わせて774人の陣容となり、目標としていた「地方議員と首長で600人以上」を達成した。
 大阪の地方政党として誕生した維新が首都圏でも勢力を拡大した背景に、野党第1党立憲民主党が主導する野党連携の退潮がある。
 立民の泉健太代表は政権交代のために野党共闘が必要と強調する。ただ、革新左派の象徴である共産党との選挙協力で歯切れが悪い。泉代表が就任時から志向する中道・穏健保守層の取り込みに影響するためとみられる。
 国会論戦で立民議員は首相や閣僚の地位をおとしめるような発言を連発する。衆院憲法審査会のメンバーをサルに例えた発言は統一選を前に保守層の離反を招いただろう。真摯[しんし]に反省すべきだが、選挙後間もなく泉代表ら執行部の責任論を封じる発言が党内から飛び出した。
 国民民主党は野党連携での立ち位置を明確にすべきだ。今回の統一戦後、榛葉賀津也幹事長(参院静岡選挙区)は自民党に対抗するための共産党を含めた一本化を「まさに野合だ」と猛烈に批判した。
 国民は、自公と3党で政策協議に踏み込み、昨年は政府予算に賛成した。一方、玉木雄一郎代表は、維新を「最も近い政党」と表現し、秋波を送る。国会の法案審議で共闘を進めても、党の政策理念が問われる選挙での協力がその場しのぎなら有権者に見透かされる。
 静岡県内の統一選で維新は三島市と函南町の議員選に公認候補を立て、当選した。だが県議選では出馬した2人とも落選。議員本人の集票力か浮動票に頼り、政党の認知度アップに地方組織の整備が追いついていない。
 松井一郎前代表は昨年の参院選後、全国政党化について「維新はベンチャー政党。まだ足腰が不十分」と認めた。行財政改革で捻出した予算で地域課題を解決していく姿勢を打ち出しても、地域の声を吸い上げる組織体制が脆弱[ぜいじゃく]なら絵に描いた餅だ。
 コロナ禍やウクライナ危機で打撃を受けた暮らしと経済の立て直しは正念場だ。バラマキ政策は通用せず、各党は国民の苦境を国政に反映させる重責を負う。政権の暴走を監視する野党勢力は健全な民主主義に必要不可欠だが、政府と対立するだけで政策提案を欠く野党には、有権者はそっぽを向くだろう。
 自民は強固な地方組織を基盤に路地裏まで気を配る「どぶ板政治」で存在感を発揮してきた。国政を担い、同時に地域政党が得意とする生活に身近な課題解決に即応できる政党でもある。岸田首相は、都市部を中心に維新を伸長させた有権者の声を真正面から受け止め、政策立案に生かしてほしい。
 政権交代の緊張感に満ちた、与野党の活発な政策論争を期待したい。

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