継承 10キロ先へ移送準備入念 郷土の歴史 発信の好機【街に戻る御殿屋台 浜松まつり’23㊦】

 戦国時代に徳川軍と武田軍が激突した「三方ケ原の戦い」の舞台、三方原地区(浜松市北区)。三方原南自治会の屋台の“売り”は甲冑(かっちゅう)姿の徳川家康と武田信玄の彫り物だ。屋台正面に家康と信玄の像がやや向かい合うように配置され、合戦の緊張感を今に伝える。

御殿屋台の準備を進める自治会役員ら。正面の家康と信玄の彫り物が誇らしげだ=浜松市北区三方原町
御殿屋台の準備を進める自治会役員ら。正面の家康と信玄の彫り物が誇らしげだ=浜松市北区三方原町

 家康を主人公にした大河ドラマの放送が進む中、約10キロ離れた中区の中心街で屋台を引き回すのは、地元の歴史を発信する好機。町民の多くが一段と張り切っている。その上、まつり最終日の5日はドラマで主役を演じる松本潤さんらが浜松入りする。全国から大勢のファンが集まりそうだ。
 屋台部会事務局長で、主演俳優と同じ「マツジュン」の愛称で親しまれる松本順二さん(67)は「自慢の屋台を大勢の人に見てもらえたら、幸せだ」と期待する。
 三方原南は屋台を持つ参加町のうち、中心街から最も遠い自治会の一つ。引き回しに参加する4日は台地の上の三方原から、台地を下った先の会場までの道のりを、ダンプカーで屋台をけん引して、ゆっくりと移動させる。その周囲を屋台部会のメンバー約20人が徒歩で見守る。道路の交通量が少ない午前4時ごろに出発し、3時間ほどをかけて移送する計画という。
 難所は四ツ池公園(中区)付近の長い下り坂。屋台をダンプの前に出し、後ろから支えて慎重に下る。信号機や標識との接触にも細心の注意を払う。ダンプの運転手を務める部会副会長の政本和秀さん(75)は「屋台の集結がなかったこの4年間で道路環境が変わった所がある。入念に下見をしたよ」と準備万全の様子だ。
 自前の屋台が完成した2016年に中心街の引き回しに初参加した。東名高速道のスマートインターチェンジ開通などで地区にはファミリー層の転入も多い。小島信夫自治会長(75)は「新しい家族や子どもも含めて団結し、屋台を末永く大切にすることで歴史を受け継いでほしい」と願う。
 (浜松総局・松浦直希、北井寛人、岩下勝哉が担当しました)

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