想定湧水量 水資源議論時より少なく JR、リニア工事影響調査 

 国土交通省は11日、リニア中央新幹線トンネル工事の南アルプスの自然環境への影響について議論する第8回専門家会議を東京都内で開いた。JR東海はトンネル工事に伴い大井川上流部の沢の流量がどの程度減少するかを分析する際に、中下流域への影響の分析時に使用したトンネルの想定湧水量よりも少ないとする条件で計算する方針を示した。

リニア中央新幹線工事の自然環境への影響を議論した国土交通省専門家会議=11日午前、東京都
リニア中央新幹線工事の自然環境への影響を議論した国土交通省専門家会議=11日午前、東京都
国土交通相専門家会議の委員の主な意見
国土交通相専門家会議の委員の主な意見
リニア中央新幹線工事の自然環境への影響を議論した国土交通省専門家会議=11日午前、東京都
国土交通相専門家会議の委員の主な意見

 JRによると、中下流域の影響を調べた時と同じ断層の透水係数(水の通りやすさ)を用いて上流の沢約40カ所を解析すると、解析値が実際の観測量より少ない傾向があった。地下への浸透量を大きく設定しているのが原因とみて、観測量と解析値が合うように透水係数を小さく設定した。このため、トンネル掘削時の湧水量も小さく見積もられることになった。
 委員から目立った反論はなく、事務局の国交省鉄道局は、JRの提案は了承されたとの認識を示した。
 JRの担当者は会議後の取材で、中下流域への影響を議論した時と透水係数が異なることについて「(中下流域の議論では)大井川全体の水の動きを予測した」と述べ、整合性はとれているとの認識を示した。森貴志副知事は、JRが沢の流量の比較に過去9年間の8、11月の観測平均値を用いたことに疑問を呈し、透水係数の妥当性については「(県の)専門部会に意見を伺いたい」とした。
 (政治部・尾原崇也、東京支社・中村綾子)

トンネル残土置き場で森副知事 JR計画前提の協議に苦言
 森貴志副知事は11日に都内で開かれたリニア中央新幹線トンネル工事の自然環境への影響を議論する国土交通省専門家会議で、JR東海が示したトンネル残土置き場計画を前提に議論が進んでいることに改めて苦言を呈した。
 この日はJRが大井川上流部の燕(つばくろ)沢近くに計画している残土置き場の緑化計画や排水設備について議論した。森副知事は燕沢の残土置き場について、県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で安全面に関する協議をしているさなかだとし、「今の段階では(議論は)早いのではないか」と指摘した。
 県は現時点で残土置き場の議論を進めることは適当ではないとする意見書を会議事務局の国交省鉄道局に1月30日付で送付した。鉄道局の担当者は会議後の取材に「JRの提案で議論を進めることについて委員の了解がとれている」と答え、問題ないとの認識を示した。

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