静岡県議選 終盤の情勢 西部

ガンバロー三唱し、結束を誓う支援者ら=3日、浜松市中区
ガンバロー三唱し、結束を誓う支援者ら=3日、浜松市中区

■掛川市(2―3) 旧市部中心に激戦 非自民票の行方が焦点
 杉村義夫 63 無新
 増田享大 55 自現
 小沼秀朗 50 自現

 自民現職2人が先行し、無所属新人が追う展開で最終盤に入った。無党派層が多い旧市部を中心に攻防を繰り広げている。連合静岡の推薦候補は不在で自主投票になり、非自民票の行方が焦点になりそうだ。
 4選を目指す増田候補は子育て・教育支援や農業振興の実績など3期12年の強みをアピールし、市内全域で支持を広げる。出身地の旧大須賀町では優位に立つ。若手経営者や茶業関係者の支えも大きい。陣営は票の上滑りを警戒し、引き締めの徹底に余念がない。
 小沼候補は駅南エリアや大票田の桜木地区を足掛かりに支持拡大を図る。消防団や祭典など多彩な地域活動で培った人脈が武器。アフターコロナを見据えた地域振興や災害対策を訴えて若年層に浸透するほか、市南部でも票の掘り起こしを進めている。
 公明は増田、小沼の両候補に推薦を出した。地域別の割り当てなどは見送り、票は分散する見通し。
 特定の地盤を持たない杉村候補は知名度不足が課題。遊説中心の活動に注力して挽回を目指す。戸塚進也元掛川市長の支援を得て市内をくまなく回り、大井川の水資源の保護や浜岡原発再稼働阻止、津波対策の推進を主張して浮動票の取り込みを狙う。

■磐田市(3―4) 現新4氏が横一線
 川崎和子 63 無新
 野崎正蔵 59 自現
 江間治人 62 自現
 沢田智文 53 無現

 前回選と同じ顔触れの現職と新人計4人が3議席を争い、横一線で激しく競り合っている。各陣営ともそれぞれの地盤を固めつつ、大票田の見付地区など市中心部で票の上積みを図る。浮動票が多く、投票率が上がれば、唯一女性の無所属新人候補が優位に立つ可能性がある。
 前回99票差で苦杯をなめた川崎候補は、子育て・福祉の人脈や浪人中の地道な活動で培った支援者を通じ、市全域への浸透を図る。「選挙区初の女性県議誕生」の訴えや「完全無所属」の立場を強調し、無党派層の取り込みに余念がない。
 野崎候補は地盤の豊田地区の保守層を固めつつ、旧郡部を中心に票をまとめる。市全域の商工、農業者の支援も受けながら、党県連の政調会長、幹事長を務めた実績や政策実行力を強調し、市中心部でも票の掘り起こしを進めている。
 前回トップ当選だった江間候補は「唯一の旧磐田市が地盤の候補者」として、中泉地区を中心に旧市部の票固めを目指す。自身の会社を置く福田地区でも浸透を進める。高校の同窓生や会社経営者の人脈も生かし支持拡大に奔走している。
 沢田候補は支援母体の教職員組合を中心に、推薦を受けた連合静岡傘下の労組票を固める。1期目はコロナ禍で集会がほとんど開けず、現職ながら知名度不足を懸念する。小学校教諭時代の教え子を糸口にして若年層の浮動票獲得も狙う。

■浜松市中区(4―5) 竹内氏が後続離す 残る4氏 小差の争い
 田中照彦 56 無新
 竹内良訓 61 自現
 平賀高成 68 共元
 鈴木唯記子 47 無新
 杉本好重 61 自現

 自民現職2人と連合静岡推薦の新人2人、共産元職1人の5人による戦い。組織力に勝る自民現職の竹内候補が先行し、他の4人が激しく競っている。4人の差は小さいとみられ、最終盤の活動次第で情勢が大きく変わる可能性がある。政策面の争点が乏しく、投票率は前回選の54・05%を下回りそうだ。当落線は前回、前々回並みの1万4千程度か、やや上がるとの見方が強い。
 過去3回トップの竹内候補がやや後続を引き離している。党県連や会派の要職を務めた実績と人脈を前面に、告示前後に有力衆院議員を招いた大規模集会を重ねた。党が推す市長選、市議選候補と各地で演説会を開き、運動量で圧倒する。
 前回初当選した杉本候補は毎月の県政リポートを通じ、女性個人支援者を増やしてきた。地域や企業・団体の推薦が増え、保守票の上積みが見込めそう。公明票も流れ込んでいる模様。女性新人候補との女性票争奪に神経をとがらせる。
 田中候補は市議3期を務めて培った支援組織や自動車系労組が運動の基盤になっている。決起集会にはかつて秘書として支えた鈴木康友浜松市長が激励に訪れた。行革や産業振興を掲げて遊説に励み、労組や企業からの票を伸ばしている。
 新人鈴木候補は引退するベテラン岡本護県議の後継。市議時代から支える友人らの組織が活発で、労組票に加えて子育て世代の票を掘り起こしている。田中候補と同じ西地区が地盤で、互いに地元票の分裂にやや苦慮している模様だ。
 平賀候補は、5期ぶりの県議会複数議席獲得を目指す党が演説会に有力参院議員を送るなど後押しする。前回からの票の上積みが必須で、市長選、市議選の候補と連携して現県政の問題点や生活者目線の改革を訴え、批判票獲得を目指す。

■菊川市(1―3) 赤堀氏、黒田氏 混戦
 黒田茂 55 無新
 横山正文 55 諸新
 赤堀慎吾 64 自新

 12年ぶりの選挙戦となり、旧小笠町出身の新人3人が出馬した。1議席を巡り赤堀候補と黒田候補が激しく争う。大票田の旧菊川町の票の行方が焦点。横山候補は独自の戦い。
 赤堀候補は半数以上の市議が選対に加わり、太田順一前市長や引退する宮城也寸志県議も支援する。建設や医療など各種団体から推薦を取り付け組織戦を展開。陣営は「菊川地区での知名度が課題」とし、元副市長の実績をアピールして回っている。
 小国神社婚礼事業を営む黒田候補は「しがらみのない世代交代」が旗印。同級生を中心に支援の輪が広がっている。長年の民間での経験を政治で発揮すると強調し、無党派層や現役世代に支持を拡大している。スポット演説と称し、連日数十カ所でマイクを持つ。
 政治団体「個人の尊厳党」代表の横山候補は、リニア中央新幹線トンネル工事の湧水の流出対策について、田代ダム取水抑制案を支持する主張を展開している。

■袋井市・森町(2―3) 大票田で激しい争奪戦
 伊藤和子 65 無現
 渡瀬典幸 60 自現
 伊藤謙一 36 無新

 自民の渡瀬候補と無所属の伊藤和候補の現職2人が競り合い、無所属新人の伊藤謙候補が猛追する。最後まで予断を許さない状況が続き、各陣営は大票田の袋井南部地域での得票が勝敗の鍵を握ると見て、激しい争奪戦を繰り広げている。
 4選を目指す渡瀬候補は、各種団体から推薦を受けるなど組織力も生かして袋井市内で浸透。12年間の実績を前面に打ち出し「政策実現力」をアピールする。防潮堤事業、森町袋井インター通り線の整備促進といった地域課題への取り組みを強調し、沿岸地域や森町で票の上積みを狙う。
 前回選でトップ当選の伊藤和候補は根強い人気を誇る同町と、推薦を受ける連合票を手堅くまとめる。地盤の引き締めに加え、地元選出の国会議員や市議らと連携し、浅羽、袋井駅南地区にも進出する。唯一の女性候補の強みを生かし、主婦層をはじめとする同性票の獲得を目指す。
 現職2人に挑む伊藤謙候補はフレッシュさと10年間の市議経験をアピールし、急速に勢力を拡大。動画配信などを駆使して若者世代を取り込むほか、原田英之前市長が後援会顧問を務め、幅広い年齢層に浸透を図る。充実した支援態勢で街頭演説やつじ立ちなどを重ね、支持を広げる。

■浜松市南区(2―3) 飯田氏、山本氏リード 新人馬塚氏批判票狙う
 飯田末夫 61 自現
 山本隆久 62 無現
 馬塚丈司 71 無新

 現職2人に新人候補が告示直前に割って入った。市議、県議を20年務めた飯田候補は知名度を生かし、山本候補は会派に所属せずに活動してきた実績を前面に戦う。馬塚候補は環境保護を掲げ、現県政への批判票獲得を狙って両現職を追う。
 飯田候補は前回の県議選で他候補を引き離してトップ当選した。市議、県議の活動を通じて市と県の架け橋を心がけて活動してきたことを強調。自民が推す市長選、市議選候補とも連携し、区全域を丁寧に回る。市の行政区再編に伴う4年先の選挙戦も見据え、票の上積みを目指す。
 山本候補は長年にわたる与野党の国会議員秘書の経験から「どの政党応援者の声も受け止め、対応する」と語る。馬込川流域の防災や情報通信技術(ICT)を活用した教育を重要政策として訴え、遊説を重ねる。地元の芳川地区では同級生らの支援を受け、支持固めを急ぐ。
 馬塚候補は、市議を2期務めて今回も市議選に臨んでいる長女と連携した選挙運動で、知名度向上を狙う。街頭では「娘は市、私は県でしかできない行動をする」と“親子連動”をアピール。県が西区篠原地区に計画する野球場建設に対し、環境保護の観点から異を唱える。

■浜松市東区(2―3) 2現職を新人追う 労組、無党派票が鍵
 中沢公彦 54 自現
 丸山洵 38 立新
 大石哲司 70 無現

 5選を目指す自民の中沢候補と4選を狙う無所属の大石候補の現職2人が先行し、立民新人の丸山候補が追いかける展開で最終盤を迎えた。自主投票となった連合静岡の労組票や、無党派層の動向が当落を左右するとみられ、各陣営が訴えを続けている。
 中沢候補は地元と保守層の票固めを進めるとともに、4期16年の実績や市議選の自民系4候補と連動した運動を展開し、選挙区全域で支持拡大を図る。地域の企業や団体から支援を受け、蒲や和田地区でも浸透を目指す。前回選が無投票だったため終盤の引き締めに懸命だ。
 大石候補は大票田の地元積志地区を重点に選挙戦を繰り広げ、笠井地区にも支持を広げる。親交のある平山佐知子参院議員(無所属、静岡選挙区)の応援も受け、女性票や浮動票の取り込みを進める。知事与党会派として川勝平太知事を支えた実績から、一部労組関係者の支持も集めている。
 丸山候補は立民の源馬謙太郎衆院議員(静岡8区)の秘書経験を生かし、選挙区を小まめに回る。党支持層の浸透に加え、市野町や天王町などの世帯数が多い地域にも触手を伸ばす。相乗効果を狙って立民の市議選候補とも連携。38歳の若さをアピールし、無党派層の支持獲得も狙う。

■浜松市北区(2―3) 雪辱期す新人が猛追 前回に続き3氏接戦
 鈴木利幸 66 自現
 神間智博 55 無新
 良知駿一 40 無現

 前回選と同じ顔触れでの再戦となった。組織力で勝る自民の現職鈴木候補、連合静岡の推薦を受ける現職良知候補が先行するが、リベンジを狙う新人の神間候補が4年前の約1700票差を埋めようと猛追し、最終盤まで接戦が予想される。各陣営は支援組織を引き締めながら、浮動票の獲得に注力する。
 鈴木候補は大票田の三方原地区が地盤。出陣式には国会議員が応援に駆け付けて住民ら100人以上が集まり、地域への浸透ぶりを見せつけた。農業基盤整備などの実績からJAみっかびの推薦を取り付け、三ケ日町域を中心に旧引佐郡でも一定の票を見込む。
 良知候補は地元細江町で支持を集める。街頭演説では、専門の情報通信技術(ICT)に関して「県議会68人の中で、デジタル専門は私だけ」と他の候補との違いを強調。連合傘下の労組の支援を受けるほか、子育て当事者として女性や若年層の取り込みも図る。
 神間候補は地元都田地区と、事務所を構えた出身地の引佐町域で支持を広げる。自民系の市議時代に培った人脈を生かして三ケ日町域などでも精力的に遊説を重ね、「県政の見える化を果たす」と訴える。手ぶりや街頭演説に汗を流し、票の掘り起こしを進める。

 選挙区名、白抜き数字は定数、その下の数字は立候補者数。立候補者名は届け出順。氏名、年齢(投票日基準)、党派、現元新の順。

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