住人 自慢できる故郷に 高校時代スピーチで全国最高賞/漆畑美広さん(19)藤枝市在住【決める、未来 持続可能な街へ 私の願い①】 

社会人生活に向け、資格取得の勉強に励む漆畑美広さん=3月中旬、藤枝市
社会人生活に向け、資格取得の勉強に励む漆畑美広さん=3月中旬、藤枝市

 「自分が住む街は半分好きで半分嫌い」
 3月に静岡市葵区の科学技術高定時制を卒業した漆畑美広さん(19)=藤枝市=の地元への思いは複雑だ。近所の高齢者が交通ボランティアなどで見せる温かい笑顔や地元の味には愛着がある一方、つらい記憶も。小学校でいじめを受けた時、当時の学校関係者は手を差し伸べなかった。いじめを黙認する風潮を目の当たりにし、学校に対する不信感が生まれた。子どもの悩みに寄り添う大人がたくさんいる街になってほしい-。そう感じるようになった。
 中学に入ると、励まし、背中を押してくれる教諭がいた。その教諭の尽力で進んだ高校でも、後に恩師と呼べる人に巡り合えた。自分と対等に接してくれる恩師から、目標に向かって努力する大切さを学んだ。「大人も捨てたもんじゃない」と感じ始めた2021年、18歳で知事選を迎えた。学校教育の現場では失望させられたが、2人の恩師が自身の価値観を変えたように、変革を期待して投票所へ足を運んだ。
 自分が統一選の候補者だったら「『検討します』と繰り返すのではなく、価値観が違う人との会話を続ける行動が重要」と訴えたいと思う。
 今月から県内の通信設備関連会社で、社会人として第一歩を踏み出した。持続可能な地域づくりのヒントに、そこに住む人自身が故郷を自慢できることを挙げる。そのために、今ここに住んでいる市民にこそ地域の魅力アピールが必要、と強調した。さらに「困った子どもたちが気軽に相談できる駆け込み寺のような居場所作りにも着手してほしい」と教育面のみならず児童福祉の強化にも期待を込める。
 漆畑さんは自らができる“約束”の一つとして、就職を前に始めたことがある。SNSを通じて静岡や藤枝の魅力を配信し、そこでできた仲間から、いじめなどの悩み相談にも乗っている。この街はもっと良くなる、そんな願いも込めて。           ◇        自分の住む街、地域は、人口減少が予想されるこれから10年後、20年後にどうなっていくのだろうか。
 3月31日までに、統一地方選の前半戦となる県議選と静岡、浜松両政令市長選(9日投開票)が告示され、県内は一気に選挙モードに入った。本紙は若者投票率向上キャンペーン「決める、未来」の一環として、持続可能なまちづくりに向けた期待や地域の未来像について、県内外に居住する10~30代の6人に聞いた。 

 うるしばた・よしひろ 科学技術高定時制卒。昨年11月に都内で開かれた全国定時制通信制生徒生活体験発表会で最高賞となる文部科学大臣賞を受賞。

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