畑ワサビにICT活用 静岡で実証試験 地元3社連携 販路開拓へ

 冷涼な環境で生育する「畑ワサビ」の栽培に情報通信技術(ICT)を取り入れ、気温変動などに左右されず安定した収穫、出荷を目指す実証試験がこのほど、静岡市で始まった。葉や茎は1年を通じて収穫され、さまざまな商品への加工も可能。販路の確保など事業の採算性も含めて2年間の検証に取り組み、収量が落ち込むワサビ栽培の巻き返しを図る。

地元3社が連携し、ICTを活用したワサビ栽培の実証実験=静岡市葵区
地元3社が連携し、ICTを活用したワサビ栽培の実証実験=静岡市葵区


 一般的な「沢ワサビ」は清流が豊かな山あいのわさび田で生育するのに対し、畑ワサビは他の野菜と同様に平野部の農地でも栽培される。さわやかな風味と歯ごたえが特徴で、茎や葉の酢漬けや天ぷらなど多彩な食べ方が楽しめる。一方、農家の後継者不足などで2010年に229トンだった県内の生産量は20年に148トンまで減少している。
 実証試験は農業法人「鈴生[すずなり]」が管理や収穫を担い、3月上旬に同社のビニールハウスで1230株のワサビを定植した。NTT西日本静岡支店が用意したICT設備で施肥やかん水を自動化するほか、遮光カーテンの開閉や空調の作動なども行いながら温度を18~20度に保つ。収穫したワサビの販売、成分分析はわさび漬け製造販売の田丸屋本店が担当し、新たな食べ方も提案しながら畑ワサビのブランド化を目指す。
 促成栽培で6月中旬に収穫を開始し、適度に育った茎や葉を順次刈り取って年間2トンの出荷を見込む。通常の沢ワサビとはマーケットが異なり、田丸屋本店の望月啓行社長は「新たな付加価値として消費者にどう提供するか。試行錯誤しながらチャレンジしたい」と語る。ICTの活用により簡単に始められる農業の仕組みも整え、生産者の確保につなげる。

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