社説(3月22日)静岡県東部の活性化 新しい体育館を生かせ
沼津市に、延べ床面積で静岡県内2番目の規模となる新体育館がオープンした。2年後には富士市にも同規模の体育館が誕生する。いずれも多様な競技に対応する仕様で、市民とプロアスリートが同時に利用できるよう複数の施設を擁するなど充実した設備だ。
ただ、建設して終わりではない。供用を開始した沼津市は利用する市民や競技団体の声に耳を傾け、利用者目線で価値を高めることが欠かせない。オープンまで時間がある富士市も、今からニーズを把握して計画に反映させるべきだ。スポーツによる活性化が加速する県東部・伊豆全体を考え、いずれも交流人口や経済面で効果をもたらす施設に成長させたい。
沼津市の新体育館は市役所と市民文化センターの間の市街地に建設され、JR沼津駅から歩いて往復できるなどアクセスの良さが売り。オープン記念となった男子バスケットボールベルテックス静岡のホーム戦は、約2千人収容のアリーナ席が満員の観客で埋まった。市外からのファンも多く訪れ、利便性の高さが早速生かされた。
一方で、密集する市街地のため駐車場の確保がネック。市はこの試合の際に同駅との無料シャトルバスを運行するなど対策を講じたが、利用者の懸念を早急に解消すべきだ。
富士市の新しい体育館は4月に着工。総合運動公園内の現施設を大規模に一新する。富士山が眼前に迫る大淵地区に位置し、景観がポイント。時之栖(御殿場市)が運営し、いろいろなスポーツが楽しめたり、食事や合宿もできたりする施設「エスプラットフジスパーク」が向かい側にあり、官民連携によるスポーツの拠点化が期待できる。
郊外にあるためアクセス面が課題だが、富士山と周囲に広がる茶園のコラボが絶景のエリア「大淵笹場」をはじめ、地元の自然を生かした観光地化の可能性は大きな魅力と言える。長期滞在型施設としてチームの合宿や家族連れの宿泊に向いている。手広く観光施設を手がける時之栖のノウハウも取り込んでほしい。
沼津と富士両市は近年、自転車を柱にイベントを企画するなどスポーツによる連携を深化させている。県東部・伊豆での東京五輪・パラリンピック開催を機に醸成されたスポーツによる活性化という機運を発展させることが必要だ。それぞれの新体育館を利用して汗を流し、観光地巡りをコースに加えたイベントを開いて回遊性を高めるなど、複数のスポーツ拠点誕生を好機としたい。