「特別抗告の理由ない」 袴田さん再審巡り 元裁判長、検察けん制 都内でシンポ【最後の砦 刑事司法と再審】

 みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を求める袴田巌さん(87)の差し戻し後の即時抗告審で、再審開始を認めた東京高裁決定に対し検察が最高裁に特別抗告するかどうかの期限が迫る中、2014年に静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始を認めて釈放した村山浩昭弁護士が18日、都内のシンポジウムで「特別抗告の理由が全くない。もし特別抗告したら、検察官の抗告は法律で禁止しなくてはいけないという意見がもっともっと高まる」とけん制した。

シンポジウムで発言する元裁判官の村山浩昭氏(左端)。袴田巌さんの再審開始を認めた東京高裁決定に対する検察官の特別抗告を懸念した=18日、都内
シンポジウムで発言する元裁判官の村山浩昭氏(左端)。袴田巌さんの再審開始を認めた東京高裁決定に対する検察官の特別抗告を懸念した=18日、都内

 刑事訴訟法は、特別抗告の要件を憲法違反か判例違反がある場合とする。村山氏は高裁決定について、審理を差し戻した最高裁の課題に答えを出していると指摘。みそタンクから見つかり犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕の変色を巡り、高裁の裁判官が検察官の実験にも立ち会い、みそ漬けの血痕に赤みは残らないと判断したことを念頭に「(特別抗告するとしたら)裁判官は色の判定を間違えている、とでも言いたいのか。そんな疑問さえ抱く」と強調した。
 その上で、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てについて「あえて言えば百害あって一利なし」と述べた。検察官が争いたいなら再審公判で主張すべきとし「その道が開かないと(再審を)請求している状態で苦しんでいる人をいつまでたっても救えない」と懸念。再審法(刑訴法の第4編再審)を改正し、不服申し立てを禁止するべきとの見解を改めて示した。
 討論会では、袴田さんの弁護団メンバーで元裁判官の水野智幸弁護士も「高裁決定のどこに判例違反があるのか。特別抗告は明らかに正義に反する。とにかくやめてほしい」と訴え、世論の後押しを呼びかけた。
 シンポジウムは、再審法の改正実現を目指して東京三弁護士会(東京、第一東京、第二東京)が開いた。

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