再審無罪願い「もう一踏ん張り」 袴田さん姉ひで子さん、支援に感謝【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の再審(裁判のやり直し)開始を認める高裁決定から一夜明けた14日、支援団体主催の集会が都内の参議院議員会館で開かれた。袴田さんの姉ひで子さん(90)が出席し、「巌のことを思えば私の苦労なんて何でもない。抗告があるかと思うが、せっかく再審開始になったのだから、もう一踏ん張り、頑張りたい」と涙で声を詰まらせながら、これまでの支援に感謝した。

再審開始を認める決定から一夜明け、心境を語る袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=14日午後、都内
再審開始を認める決定から一夜明け、心境を語る袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=14日午後、都内
再審法の不備と改正の必要性を訴える「再審法改正をめざす市民の会」の青木恵子さん(左から2人目)=14日午後、都内
再審法の不備と改正の必要性を訴える「再審法改正をめざす市民の会」の青木恵子さん(左から2人目)=14日午後、都内
再審開始を認める決定から一夜明け、心境を語る袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=14日午後、都内
再審法の不備と改正の必要性を訴える「再審法改正をめざす市民の会」の青木恵子さん(左から2人目)=14日午後、都内

 集会には与野党の国会議員が駆けつけて袴田さんにエールを送り、検察の特別抗告の動きをけん制した。袴田巌死刑囚救援議員連盟の塩谷立会長(衆院比例東海)は「再審無罪を獲得するまでしっかり頑張りたい」と力強くあいさつ。小山展弘氏(衆院静岡3区)は「袴田さんの奪われた人生の埋め合わせはできないが、今からでもできることを少しでも応援していきたい」と言葉に力を込めた。
 弁護団の間光洋弁護士は「検察が高裁決定を覆すことは不可能だ。再審無罪へのレールは敷かれた。あとは無罪獲得までどれだけ早くたどり着けるかだ」と指摘した。

法相に指揮権発動要請へ 特別抗告阻止目指し弁護団
 袴田巌さんの弁護団は15日、検察の特別抗告を阻止するため、検事総長に対する指揮権を発動するよう斎藤健法相に申し入れる。
 袴田巌死刑囚救援議員連盟に申し入れ書を託した。議連の塩谷立会長らが法務省に出向いて提出する。
 申し入れ書は「証拠捏造(ねつぞう)を含む捜査機関による多くの違法行為が指摘されている」とした上で、「当事者の検察庁に不服申し立て権の適正な行使を期待することは困難」などと訴えている。

再審法改正 実現を 「市民の会」 都内で会見
 袴田事件の再審開始を認めた13日の東京高裁決定を受け、「再審法改正をめざす市民の会」は14日、都内で記者会見を開いた。冤罪(えんざい)当事者らが検察の不服申し立てによる審理の長期化など刑事訴訟法の再審規定の不備を指摘し、法改正の実現を訴えた。
 13日付の声明で同会は、再審開始決定を歓迎し、再審法改正に向けた機運の高まりに期待を寄せた。袴田事件で新証拠として開示された「5点の衣類」の写真が再審開始決定の鍵になったとし、再審請求審における証拠の全面開示の必要性を強調。検察官の不服申し立ての禁止、審理手続きの明文化も改正の要点とした。
 1995年に大阪市東住吉区で起きた女児死亡火災で再審無罪が確定した同会代表委員の青木恵子さん(59)は、検察の抗告により再審開始や刑の執行停止決定が覆った自身の経験を引き合いに「袴田さんをこれ以上苦しめることがあるのか。早く裁判と関係ない普通の生活を送ってほしい」と語り、検察に特別抗告の断念を求めた。

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