川根本町 災害時の物資輸送 孤立防止へドローン活用【ウィズコロナを見据えて 志太榛原23年度予算案⑥完】

 昨年9月の台風15号は川根本町に大きな被害をもたらした。土砂流入や道路決壊で山間部の一部集落が孤立。被災から数日は町職員らが現場にたどり着けず、物資運搬の難しさが浮き彫りになった。町は教訓を踏まえ、課題解消に向けて動き出す。

土砂流入や倒木で寸断された壱町河内区に続く道路(川根本町提供)
土砂流入や倒木で寸断された壱町河内区に続く道路(川根本町提供)

 南部の山奥に位置する壱町河内区は最大で13世帯29人が孤立、停電と断水も起きた。町職員がバイクに物資を積み、道路状況が不安定な中、道が寸断された箇所まで進んだ。その先からは住民らで協力し合い、バケツリレー方式で物資を運んだという。区長の森下一淑さん(65)は「高齢者が多い地域。支援物資を人力で各家庭に運ぶのが一苦労だった」と振り返る。
 山間地に集落が点在しているため、有事に壱町河内区のような孤立が複数発生する可能性がある。町は災害対応強化を2023年度の重点項目に掲げ、取り組みの一つに、ドローンを活用した孤立集落への物資輸送実証実験を実施する。当初予算案に事業費500万円を計上した。
 積載限度が5キロ、片道約10キロの飛行能力を持つ物流専用ドローンを活用する。孤立が予想される地域をゴール地点に南部と北部で計二つのルートを決め、物資輸送のテスト飛行を行う。実証地区の選定や地区への説明会などを経て、9月までには実施する予定だ。
 将来的には日常の買い物支援などでの活用も視野に入れる。山間部に住む住民の大半は高齢者で移動販売や宅配サービスの利用者が多い。ただ、来年春に始まるトラックドライバーの残業規制強化により、町内の配送にも影響が出る可能性がある。
 物流専用ドローンによる買い物支援や配送事業は、全国の一部自治体で試験的に活用が進んでいる。情報政策課の坂下誠課長は「困ってからでは遅い。いずれはドローンを活用した独自の物流支援システムを構築したい」と見据える。

 <メモ>町は被災した道路や河川の復旧事業に8億1100万円を計上した。災害対応強化として、指定避難所の非常用発電機設置(430万円)や自主防災会組織の食料、資機材の整備補助(230万円)などにも取り組む。

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