牧之原市 持続可能な農業構築 荒廃農地再生 収益化狙う【ウィズコロナを見据えて 志太榛原23年度予算案⑤】
牧之原市坂部の農地で2月上旬、荒廃した茶園から伐採した茶樹を活用した「バイオ炭」製造の実証実験が行われていた。粉砕機にかけられチップ状になった茶樹は製炭炉の中でゆっくりと加熱され、炭へと生まれ変わった。

事業を進めるのは農業ベンチャーのシンコムアグリテック(茨城県)。「バイオ炭」を土壌改良材として活用した農地再生に加え、土に埋めることで生物資源に含まれる炭素を地中に貯蓄する。二酸化炭素(CO2)排出量削減にもつながるため削減、吸収量を環境価値として認証する国の「J-クレジット制度」による収益化を目指す。まさに一石二鳥の取り組みだ。山村英司社長は「市内は温暖な気候で日照時間も長い。このままではもったいない」と話す。
市によると、市内の茶園面積は2015年時点で2100ヘクタールあったが、生産者の高齢化や茶価低迷で20年には1600ヘクタールに減少。重油や肥料の高騰が続き、今も厳しい営農環境が続く。景観維持の面からも荒廃農地対策が急務となる中、市は新年度、農業経営の安定化や環境対応加速を目指して当初予算案に125万円を計上し、官民連携組織の「オーガニックまきのはら推進協議会」を設置する方針だ。
協議会はバイオ炭活用や減農薬・減肥料の取り組みを広げ、「環境にやさしい」茶などのブランド化を進めながら、収益源の確保を目指した出口戦略を模索する。荒廃農地の収益化に向けては農作業負担が大きい傾斜地などではレモンなど他の農作物への転作も促進する。
県内有数の茶どころを守るためには、環境意識の向上に対応した生産体系確立や、複合作物栽培を通して、農業経営の持続可能性を高める必要がある。お茶振興課の大石寛之係長は「荒廃農地をこれ以上増やさないためにも、計画をより具体的に構築して事業者の参画を促していく」と前を向く。
<メモ>J-クレジット制度は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が「クレジット」として可視化し、認証する制度。クレジットは企業などと売買取引することができる。