不適切盛り土196カ所 地番まで公表へ 静岡県、対策会議で決定
静岡県は8日、不適切な盛り土への対応を関係部局間で協議する対策会議を県庁で開き、県内の不適切盛り土196カ所の位置情報を公表すると正式に決定した。地番までホームページに公開し、周辺住民への注意喚起や不法行為抑止の効果を高める。県によると、不適切盛り土の情報について全面的な公開に踏み切る自治体は全国でも少ないという。

会議は非公開で行われた。会議後に取材に応じた県盛土対策課によると、地番のほかに盛り土の大きさや、斜面や平地など盛り土が形成されている地形、県による安全性把握調査の実施状況などを一覧表にして示し、地図も掲載する。盛り土が撤去されたり、違法状態が解消されたりしたら情報を更新する。
県は不適切盛り土196カ所を熱海土石流後の盛り土総点検などで把握した。その後、違法状態が是正された盛り土もあるため、所在する市町に現状把握を求め、情報が集まり次第一斉に公表する。望月満課長は「できるだけ早く公表したい」と述べた。
県はこれまで、把握した不適切盛り土について所在する市町のみ明らかにし、具体的な位置情報を非公開としていた。豪雨時などに避難を促すためとして周辺住民には情報を周知していたが、公表したほうが住民の安全性が高まると判断した。
■静岡・葵区日向、杉尾 「安定性確保されず」
静岡県は8日に開いた盛り土対策会議で、藁科川上流域にある静岡市葵区日向、杉尾地区の無許可盛り土に関し、ボーリング調査・分析の結果を踏まえ「(両地区とも)安定性が確保されていない」と報告した。造成業者の示した対策が不十分とする見解も示したが、判断の根拠を示す調査・分析資料は報道機関に公表しなかった。
安定性の評価は、砂防担当者が会議後の説明で明らかにした。ボーリングは、造成前に沢だった箇所を中心に日向4カ所、杉尾2カ所で実施し、採取した地質試料から地下水位などを調べた。
盛り土の崩落リスクが確認されたとして今後は業者に盛り土の全量撤去を求めるほか、県が梅雨前までに傾斜計や土石流センサーを設置し、盛り土が崩落しても下流の住民が早期に避難できる体制を整えるという。
業者が対応しない場合の行政代執行は、残土を捨てる場所が近くにないとして部分撤去も選択肢とする。会議内で異論は出なかったという。
日向の盛り土は県が存在を知ってから17年間、撤去命令を出さずに土砂を放置していた。こうした行政対応が妥当だったのかは会議で総括しなかった。