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最後の不明者の遺族、一歩前へ「やっと来られた」 熱海土石流1年8カ月

 熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年8カ月が経過した。最後の行方不明者で、1月に土砂仮置き場で骨が見つかり28人目の犠牲者となった女性=当時(80)=の長男(57)が初めて月命日に現場付近を訪れ、近所づきあいのあった被災者とともに黙とうをささげた。
 「ご心配をおかけしました。やっと来ることができました」。20回目の月命日。これまで欠かさずに現場付近で慰霊に訪れていた被災者の太田滋さん(66)と久々に再会した男性の目から涙がこぼれ落ちた。「(女性が)帰ってきてくれて本当に良かったね」。滋さんの目にも光るものがあった。
 発災時刻とされる午前10時半ごろ、男性は現場方向に向かって深く頭を下げて手を合わせた。これまで自身の気持ちを整理できず、月命日に住民や被災者と顔を合わせることができなかった。「やっと母が見つかりほっとしている。少しずつ前に進んで行かなければ」。そう穏やかな表情で語った。
 滋さんは「警察や土木業者が一生懸命探してくれた結果だと思うが、(女性の)強い意志もあって出てきてくれたと思う」と話した。ともに黙とうした被災者の関沢浩さん(56)も「(女性は)『土石流のことを忘れないで』とメッセージを送っていたと思う。各地で違法盛り土が見つかっている。そのきっかけとなった伊豆山のことを徹底的に検証してほしい」と訴えた。
 土石流の起点付近では不安定土砂の搬出が始まったが、被災地の復旧復興は進んでいない。男性は「被災地が変わるのに何年かかるのか。伊豆山に戻りたいと思っている人の気持ちが薄れてしまう。一日も早く戻れる場所をつくってほしい」と願った。
 (熱海支局・豊竹喬)

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