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インボイス 静岡県内備え着々 事業者、取引継続の“免許証”

 企業などに課される消費税の仕入れ税額控除に関する新規則「インボイス制度」の10月開始を控え、県内事業者が準備を進めている。インボイス(適格請求書)発行事業者登録の有無により取引先の税負担額が変わるため、登録していない事業者との取引打ち切りや値下げの要求につながるのでは、との懸念が根強い。各地の税務署や商工団体は、セミナー開催や専門家の派遣などを通じて周知や対策に注力する。

インボイス制度に関する資料を眺める角田充博代表取締役。登録番号を管理するシステムを導入した=2月中旬、静岡市駿河区
インボイス制度に関する資料を眺める角田充博代表取締役。登録番号を管理するシステムを導入した=2月中旬、静岡市駿河区
インボイス制度の仕組み
インボイス制度の仕組み
インボイス制度に関する資料を眺める角田充博代表取締役。登録番号を管理するシステムを導入した=2月中旬、静岡市駿河区
インボイス制度の仕組み


 住宅の増改築や家具製作を手がける大工の間渕広道さん(47)=藤枝市=は、インボイス発行事業者登録の準備を進めている。現在は免税対象の事業者だが、取引先の多様化を見据えて課税事業者への転換を決断。「納税で収入が減る可能性はあるが、相手先が税控除を受けられることで安定して取引できる。登録は事業継続のための免許証」と捉え、商工会議所の助言を受けつつ、会計書類を整えて申請する予定だという。
 個人経営の職人や農家、作家らの多くは免税事業者だ。新制度の下で取引相手も対応を迫られている。
 「職人さんを説得して、インボイス発行に向けた手続きを進めてもらっている」。静岡市駿河区の電気工事業ケーディーエスの角田充博代表取締役(50)は、5年ほど前からインボイス制度を取引先に周知し、請求書や登録番号を管理するシステムを導入するなど準備を進めてきた。一部の取引先が免税事業者の状態を保つ場合は税控除が受けられなくなるが、「長年の付き合いがあるので取引は続けていく」と強調する。
 県商工会連合会が2022年10、11月、県内129事業者に行った調査で、インボイス制度の認知度は8割を超えた一方、経理システム整備や請求書の記載事項確認などの具体的な準備を進める事業者は3割を下回った。免税事業者が課税事業者に転換する際の懸念点としては「負担増で利益を確保できない」「制度が複雑で事務負担に対応できない」などの声があった。
 同連合会の吉田謙二事務局長は「制度への対応に向け、専門家派遣などの取り組みを続けていく」と語る。

 インボイス制度 事業者間の製品やサービスの取引時にかかる消費税の新ルール「適格請求書等保存方式」の通称。課税事業者が税務署の審査・登録を経て、品目別税率などが記載された請求書類を発行することで、売り先の仕入れ税額が控除される仕組み。売上高1千万円以下の消費税の免税事業者はインボイスを発行できないため、売り先は税控除を受けられない。免税事業者は売り先と協議し、課税事業者に転換して納税するか、免税対象の状態を保つかを選択する必要がある。ただ、売り先の税負担が増す免税事業者との取引を敬遠するのではないかとの懸念が指摘されている。

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