愛鷹山山麓に絶景古墳 眺望重視の造成 死生観探る鍵 富士
愛鷹山山麓の富士市江尾で、駿河湾を望む古墳の発掘調査が進んでいる。周辺に約千基が集まる船津1古墳群の中では最も高い標高146メートルに位置する1基。絶景を選んだ埋葬は、死後の安らぎを祈る先人の思いを今に伝えている。
現場は新東名高速道路の中尾橋北側で、火山灰土のローム層が広がる地区。県埋蔵文化財センターが1月中旬、周辺の茶畑造成に先立つ詳細調査を実施し、運び込まれた岩を壁材にした石室などを確認した。床には拳大の河原石が敷き詰められ、谷を流れる川から運んだことが想像できる。
同センターによると、この古墳の造成は6世紀末から7世紀ごろ。石室は長さ4・1メートル、幅1・3メートルの標準的な大きさで、壁材の岩は大きいもので1トン弱。付近からは、ひもを通す穴が付いた勾玉(まがたま)や切り子玉、矢尻などの副葬品が見つかった。地区の有力者のために造られたと考えられるという。
明治時代以降はミカン畑に姿を変え、石室の上部に積まれたと思われる岩や土は失われている。同センター調査班の岩本貴さんは「岩を運んだり区画を示す溝を掘ったり、古墳を築く土木工事の様子や労力がうかがえる。眺望を大切にしていることから死生観にも興味が深まる」と話す。
現地では2月下旬まで撮影などの記録保存が行われている。
船津1古墳群 富士市教育委員会による愛鷹山南西の文化財調査で1988年に発見された。古墳造営が衰退に向かった飛鳥時代ごろの墓が富士市東部に集中する。規模や構造を明らかにする調査が農地整備と合わせて進められている。詳細は県埋蔵文化財センター<電054(385)5500>へ。