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社説(2月17日)県当初予算案 転換期 問われる実効性

 静岡県が発表した2023年度当初予算案は、新型コロナウイルスと物価高騰の対策に国と連動して当たり、課題が顕在化した子どもの安全や災害対策に重点を置いた。一般会計は0・4%増の1兆3703億円。5年連続の増加で、昨年度に続き過去最大を更新した。
 新型コロナは感染症法上の位置づけが5月に引き下げられることが決まった。脱炭素化、デジタル化と合わせて社会経済活動は大きな転換期を迎えている。こうした中、予算案はタイトルに「日本の『文化首都』の開幕」を掲げた。川勝平太知事肝いりの東アジア文化都市事業になぞらえた。新年度は文化芸術の魅力を国内外に強力に発信する構えだ。
 ウィズコロナを見据えた県民の暮らしと経済の立て直しで、産業の裾野が広い観光関連事業へ注力する姿勢は理解できる。ただ、この政策理念が疲弊する県民の生活生業や事業者の感覚と乖離[かいり]するなら絵に描いた餅だ。5億円近い予算を投じる以上、事業目的にうたう「観光誘客拡大、経済活動の活性化」で相応の実績を上げなければ県民は納得しない。
 県予算案は安全・安心の地域づくりを優先し、全体として手堅い編成となった。県の将来をけん引する特色ある政策を見ると、スタートアップ助成や中小企業への省エネ設備補助、水素分野への投資など多様な施策を用意したが、国のメニューに呼応した事業が目立ち、小粒の印象は拭えない。
 県税収入は約80億円(1・7%)の伸びを見込むが扶助費など義務的経費は伸び続け、投資に回す予算は3・5%減の約67億円減。新型コロナ対策で国から拠出された地方創生臨時交付金が100億円以上減額される。県内の感染状況に応じた対策は当面継続が必要で、防災や社会保障への手当てを含め県民の安全安心の視点で施策の効率化、重点化を一層進める必要がある。そのためには県議会や市町、関係機関との対話を強化し、連携して地域の課題解決を図らなければならない。
 予算案の柱に据えた子どもの安全対策強化には前年度当初比2倍の3億9200万円を盛った。保育相談窓口の新設や大規模保育所の保育士追加配置などに充てる。多忙な保育士の負担軽減にも注力すべきである。防災・減災対策では台風災害や熱海市の土石流災害の教訓を踏まえ、河川や土砂災害の緊急対策を行う。新「地震・津波対策アクションプログラム」に沿い、避難行動に焦点を当てた施策も用意した。
 公助が行き届かないことを想定し、自助・共助が機能するよう備えたい。

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