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子どもの安全 配置基準、処遇見直しを【点検 2023年度静岡県予算案㊤】

 今月上旬、三島市の白道こども園。園庭を駆け回り、楽しそうに昼食を食べる園児の姿が見られた。0~5歳児約190人を預かり、国の基準を上回る26人の保育士を配置する。「子どもたちを健やかに育てたいという思いで皆が一生懸命やっている」と土山雅之園長(61)。新型コロナウイルス禍に伴う業務増加や子どもの安全管理に関するマニュアルの見直し、研修と現場の負担感は増しているといい「今こそ保育の質向上に目を向けるべきだ」と訴える。

園児の世話をする保育士。多忙化の解消へ配置基準の見直しを求める声が上がる=7日、三島市の白道こども園
園児の世話をする保育士。多忙化の解消へ配置基準の見直しを求める声が上がる=7日、三島市の白道こども園
子どもの安全対策関連事業
子どもの安全対策関連事業
園児の世話をする保育士。多忙化の解消へ配置基準の見直しを求める声が上がる=7日、三島市の白道こども園
子どもの安全対策関連事業

 静岡県内の保育施設では昨年、送迎バス置き去り死や虐待事件が次々に明るみに出た。子どもの安全が何よりも優先されるはずの現場で保育環境の不備が発覚し、行政の対応の遅れも問題視された。
 県は2023年度当初予算案で「子どもの安全対策関連事業」として、前年度当初比の2倍となる3億9200万円を計上。不適切保育の通報を受け付ける相談窓口の新設や事前通告のない抜き打ち監査導入など、初期対応や安全管理のチェック強化を打ち出した。
 県保育連合会会長も務める土山園長は県予算案の編成方針を評価する一方、長年の課題となっている配置基準の見直しが進まないことに危機感を募らせ、「静岡県が国に先行して取り組んでほしい」と求める。
 国が定めた配置基準は4~5歳児の場合、30人に対して保育士は1人。欧米に比べて手薄で、手厚く配置しようと基準より多くの職員を雇えば、その分の人件費は園側が負担することになる。
 日本総研の調査では保育の課題に配置基準を挙げた保育士らが48・3%に上った。「多忙化を解消しなければ子どもに寄り添った保育ができなくなる」(静岡市の私立保育園)と現場の声は切実だ。
 国や自治体は待機児童の解消に向け、受け皿となる保育施設の整備に力を入れてきた。最近は充足感が指摘されるようになり、量から質への転換を求める声が高まる。
 県立大短期大学部の永倉みゆき教授(保育学・児童学)は「保育施設の急増が今回の事件や事故と無関係ではない」と話す。「静岡県が保育の質をどのように向上させるかは日本中が注目している。配置基準や保育士の処遇改善など踏み込んだ施策で本気度を見せてほしい」と、保育現場が直面する構造的な課題に向き合う必要性を指摘する。
      ◇
 県が編成した23年度当初予算案は、「安全・安心な地域づくり」や「豊かな暮らしの実現」などを柱に掲げた。子どもの安全、防災・減災、企業支援に焦点を当て、県の対応と課題を検証する。

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