さくら保育園に改善勧告 静岡県と裾野市 園児虐待事件受け
裾野市の私立さくら保育園で虐待などの不適切な保育があったとして、県と市は9日、運営する社会福祉法人桜愛会(同市)に対して再発防止を求める改善勧告と文書指摘を出した。園児の安全確保などが不十分だったと判断し、不適切保育が起きた原因解明と保護者らへの説明も求めたとみられる。桜愛会は3月までに報告書を提出する方針。
県と市は児童福祉法や子ども・子育て支援法などに基づき、昨年12月から合同で特別監査を実施していた。県と市の職員が9日午前に同市福祉保健会館で、園長を兼ねる酒井和夫理事長(51)に文書を手渡し、口頭で勧告と指摘を行った。
特別監査では職員への聞き取りや全保護者へのアンケート、関係書類の精査に加え、虐待行為に関与したとされる女性保育士3人=いずれも退職=から話を聞いたという。園と市のこれまでの調査では昨年6~8月に、園児に対する暴行や暴言、冷やかしといった16の行為が繰り返されていたとされる。関係者によると、このうち、頭をたたくなど9前後の行為が認められたという。
裾野署は昨年12月、園児を宙づりにしたなどの暴行容疑で3人を逮捕した。静岡地検沼津支部はその後、3人を処分保留で釈放し任意で捜査している。同僚の保育士が不適切行為を当時の園長らに訴えたが改善されず、園の体質にも問題があったとみられている。
運営法人理事長「早急に改善」
改善勧告を受け、さくら保育園を運営する桜愛会の酒井和夫理事長は9日、取材に応じ、「(勧告を)真摯(しんし)に受け止めている。外部の有識者や弁護士を含めた改善委員会を立ち上げていて、早急に改善に取り組む」とした。
虐待事件の発覚後に就任した酒井理事長は「保護者、園児の皆さまに本当にご迷惑をおかけした。正常な保育の現場を取り戻すため、全力で取り組んでいる」と改めて謝罪。事件の背景や、同園の元保育士3人以外に不適切保育はあったのかという問いには「原因究明と再発防止に努める」と明言を避けた。内部調査などでこれまでに把握した不適切保育16項目には「(今回の指摘では)確認されていない事項もあると聞いた」と答えた。
釈放された元保育士3人とは連絡が取れていないという。現在の園の雰囲気は「子どもの笑顔も戻り、通常の明るい雰囲気になりつつある」と説明した。