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中心街の活性化 「衰退」打開 決め手欠く【政令市長 成果と課題②/浜松市㊥】

更地となり、フェンスで囲まれた松菱跡地。中心街衰退の象徴のようにも映る=2日、浜松市中区
更地となり、フェンスで囲まれた松菱跡地。中心街衰退の象徴のようにも映る=2日、浜松市中区

 「あそこは地雷だから踏まない方がいい」
 昨年末の浜松市役所市長室。経済関係者と面会した鈴木康友市長は、冗談っぽさもにじませながら強い口調で語り始めた。
 「あそこ」とは2001年の経営破綻から20年以上が経過し、更地状態が続く百貨店「松菱」の跡地。JR浜松駅から北西へ徒歩数分、浜松の一等地にある広さ約4600平方メートルの空き地は、今もフェンスに囲まれたままだ。
 03年のコンペでアサヒコーポレーション(中区)が再開発事業施行者に選ばれたが、景気低迷などで商業施設の整備計画は頓挫した。市は17年と19年、施行者に対し、早期に事業を開始するよう都市再開発法に基づく勧告を行ったものの、動きは一向に見られない。事態の進展を求める経済関係者に鈴木市長は「施行者から主体的計画が出ないと、やりようがない」といらだちを隠さなかった。
 年々にぎわいを失う中心街。人出は減り、市の歩行量調査ではコロナ禍も重なった21年度は平日、休日ともに01年度の半分以下に落ち込んだ。路面部分の空き店舗区画も14年度の78から22年度は113に拡大。週末やイベント時は一時的ににぎわうが、平日は昼夜とも人通りが少ない。20年間にわたり居酒屋を営む70代女性は「5、6年前から特に客足が減った。経営は厳しくなる一方」と漏らす。
 中心街衰退の象徴的存在で、最大の課題の松菱跡地。事業が進まない一因に、市長と施行者の信頼関係の問題を挙げる声も多い。市長の言葉通り、市が「地雷」を避けているようにも映る。市の中心市街地活性化方針にも松菱跡地に関する記述は、一切ない。
 市は行政や商業施設に頼らず、事業者自身が魅力を磨き、集客力のある店舗を創出してもらうためのリノベーションスクールや出店支援に活性化策のかじを切った。11年に駅前の全天候型イベントスペース「ソラモ」、22年に憩いの空間「新川モール」を整備。回遊性の向上を狙っているが、まだ顕著な成果には至っていないのが現状だ。
 浜松商店界連盟の御園井智三郎会長(62)は「松菱跡地は民間では限界。市が力強く引っ張ってほしい」と切望する。同時に「われわれも時代の変化に対応し、生き残るための魅力づくりを進めなければ」とかみしめるように語った。

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