「東海道の美 駿河への旅」展 2月11日から静岡市美術館 魅力あふれる“家康の遺産”
旅ブームに沸いた江戸時代の東海道が育んだ美術や文化を紹介する展覧会「東海道の美 駿河への旅」が11日、静岡市葵区の静岡市美術館で開幕する。街道のにぎわいを今に伝える東海道図屏風[びょうぶ]、当時の人気絵師が駿河の人々のために描いたふすま絵など全85作品を展示する。
東海道を描いた絵画は17世紀初頭、宿場の整備による街道の繁栄を背景に登場した。東海道図屏風もその一つで、富士山など各地の景観のほか、旅人やにぎわう宿場など豊かな風俗描写も魅力である。
出版文化が花開いた江戸時代、街道を通じて全国のさまざまな情報が行き交うことで、より一層旅や風景への関心が高まりを見せた。特に江戸時代後期に刊行された「東海道名所図会」や「東海道中膝栗毛」など東海道を題材とした版本は、空前の東海道ブームをもたらし、葛飾北斎や歌川広重の「東海道五十三次」など浮世絵版画に大きな影響を与えた。
また、東海道は駿河の文化人と上方や江戸の絵師たちとの交友も可能にした。江戸後期には池大雅、伊藤若冲、円山応挙、曽我蕭白[しょうはく]、司馬江漢など個性的な絵師たちによる新興の美術が東海道の地の利を得て駿河にもたらされた。
原(沼津市)の植松季英[すえひで]が築いた名園・帯笑園[たいしょうえん]は、大名や文人墨客が集う文雅の場であった。松蔭寺の住職・白隠[はくいん]を支え、その高弟・斯経[しきょう]を介して一流の絵師たちの書画を収集、子の季興[すえおき]を応挙に入門させるなど、最新の文化を駿河にもたらした。
駿河各地で詩書画による交流が行われ、司馬江漢は旅の途中に庵原の山梨家や藤枝の大塚家を訪れたと「西遊日記」に記している。大塚家は浦上玉堂とも親交があった。江戸時代の記録や各家に伝存した作品からは、文雅を愉[たの]しむ人々の豊かな世界がうかがえる。
今年、徳川家康が再注目されているが、本展により改めて家康の遺産ともいえる東海道の魅力に触れていただければ幸いである。
(大石沙織・静岡市美術館学芸員)
■会期 2月11日~3月26日(月曜休館、前期は3月5日まで)
■会場 静岡市美術館(静岡市葵区紺屋町17の1 葵タワー3階)<電054(273)1515>
■開館 午前10時~午後7時(入場は午後6時半まで)
■観覧料 一般1300円(2月10日まで前売り1100円)、大学生・高校生・70歳以上900円(同700円)、中学生以下無料 障害者手帳などの提示者と介助者原則1人無料
■関連催事 講演会「マッケンジー本と駿河の文芸」3月4日午後2時、無料、講師は大高洋司氏(国文学研究資料館名誉教授)、定員60人(往復はがきまたはホームページで申し込む。締め切り2月16日) 講座「美術×歴史 東海道図屏風を語る」3月11日午後2時、講師は静岡市歴史博物館と静岡市美術館学芸員、定員60人
■主催 静岡市、静岡市美術館、静岡市文化振興財団、静岡新聞社・静岡放送
■特別協賛 清水銀行