社説(1月26日)静岡県パートナー制度 多様性認め合う社会に

 静岡県は性的少数者などのカップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」を3月1日からスタートさせる。事実婚の異性カップルも対象で、2月1日から事前受け付けを開始する。誰もが自分らしく安心して生活できるよう、官民のサービス充実など環境を整備するとともに、多様性を認め合う社会づくりを進める契機にしたい。
 制度は法的に結婚が認められない同性カップルなどの権利を補完し、生きづらさの解消を目指す。宣誓で受けられるサービスや対応は、親族であることが条件の公営住宅への入居申し込みや公立病院での病状説明に関する家族同様の取り扱いなどを想定。カップルの子どもを含めて家族関係を認める「ファミリーシップ」の規定も盛り込んだ。
 民間では既に住宅ローンの連帯債務者などとなる配偶者の定義に同性パートナーを加える県内金融機関もあり、取り組みが更に拡大するよう事業者に働きかけるとした。
 県内では浜松、富士、静岡、湖西市が同様の制度を導入済みで、4市の住人も県制度を利用できる。県制度の宣誓カップルが、居住市町の公営住宅への入居などが可能になるよう調整するという。県と市町は十分に協議を重ね、柔軟な運用に向け連携を強化することが必要だ。
 NPO法人「虹色ダイバーシティ」などによると、パートナーシップ制度を導入する自治体は1月10日時点で全国に255あり、制度の「人口カバー率」は65%を超えた。県政インターネットモニターのアンケートでも、導入を肯定的に考える人が7割超を占めた。
 制度が各地に広がりつつある中、性的少数者の孤独や孤立の深刻さをうかがわせる調査結果もある。NPO法人「ReBit(リビット)」の2022年9月の調査では、10代の性的少数者の約7人に1人が過去1年間に自殺未遂に至った。自殺を考えたことがあると答えた10代の割合は48・1%に達し、20代は4割、30代前半は3割を上回った。
 性の多様性などへの理解はいまだ広く社会に浸透しているとはいえず、パートナーシップ制度の導入を理解と行動の広がりにつなげたい。性的少数者などの権利を保障し、周囲が当たり前の事として適切に対応できる社会は、誰にとっても生きやすい世の中といえるのではないのか。
 自分の気持ちを伝えることができる相手や場所の存在が、当事者の心の支えになることも確認されている。心ない言葉や行動は当事者を深く傷つける。多様性を尊重することができるよう、自治体は啓発活動に力を入れてほしい。学校や企業は教育や研修、相談窓口の開設などに積極的に取り組むべきだ。
 LGBT総合研究所(東京)が成人34万人以上から回答を得た19年の調査では、10人に1人が性的少数者に該当するとの結果だった。年齢層に関係なく、身の回りに必ず存在するという当事者意識を持って向き合う必要がある。埋没しがちな若年当事者の悩みや苦しみに対しては、家庭や学校の理解、当事者と保護者双方への支援が重要だ。
 同性婚を認めていない民法や戸籍法の違憲性が争われた訴訟で東京地裁は昨年12月、「違憲状態にある」との判断を示した。判決は、憲法が婚姻や家族などに関する立法に際して「個人の尊厳に立脚する」ことを求めていることを重視、同性カップルが家族になるための法制度がない現状を「人格的生存に対する重大な脅威、障害」と厳しく指摘した。
 動きが鈍い国会に、法整備を強く促す判決といえる。自民党は21年、性的少数者への理解増進を図る法案について保守派の強い反対で国会提出を見送った。パートナーシップ制度は大きなうねりとなっている。国は、多様性を尊重し合う社会づくりを自治体任せにしてはならない。

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