大自在(1月26日)最強寒波

 芭蕉、蕪村と並び江戸時代を代表する俳諧師の小林一茶は、信濃国・柏原(長野県北部)の農家に生まれた。15歳で江戸に奉公に出され、30代は関西、四国、九州の俳句修業の旅に明け暮れた。
 51歳で豪雪地帯の郷里に永住を決意した。〈是[これ]がまあつひの栖[すみか]か雪五尺〉。150センチほどの積雪を前に、苦しい漂泊を経た一茶の「ここを安寧の場所たらしめようという覚悟、闘志の吐露」と、俳人で静岡県立大名誉教授の関森勝夫さんは説く(「時季[とき]のたまもの」)
 雪は桜、月とともに日本の風雅の代表に挙げられる。しかし歳時記などでは、時に生命を奪う恐ろしい存在でもあるという文脈で語られることが多いようだ。
 俳人の石寒太さん(伊豆市出身、本紙読者文芸選者)は、20年以上前に「一茶記念館」(長野県信濃町)を訪れて、雪五尺の句を実感したという。最寄り駅の名称は柏原からスキー場で知られる黒姫に。一茶が「いまいましいもの」と記した雪は今、故郷を潤す(「『歳時記』の真実」)
 列島は「10年に1度」級の強い寒気が流れ込み、各地で記録的な寒さ。北日本から西日本の日本海側は大雪となり、交通網や物流に大きな影響が出た。
 一茶の句は俗語や方言を使い、自由率直で人間味にあふれる。「是がまあ」の句に体温を感じるにつけ、もどかしい国会論戦や衆院議長の振る舞いに「是がまあ、日本の政治」と、ざれ言の一つも。季語の「寒さ」は肌の感じだけでなく、心境にも使われる。そうでなくても物価高騰で懐が寒い。次々寄せ来る、これも最強寒波か。

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