社説(1月25日)春闘経団連方針 中小賃上げにも配慮を

 インフレに苦しむ庶民の声に企業経営者は応えてほしい。2023年の春闘が事実上スタートした。経団連は春闘に対する指針で、歴史的伸びを示す消費者物価への配慮を打ち出した。賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)に踏み込み、大幅な賃上げを「社会的責務」と踏み込んだ。時宜を得た判断だ。
 経団連は、物価上昇と賃上げの好循環を狙う岸田文雄政権と足並みをそろえた。いよいよ、賃上げを契機に「失われた30年」と称される日本経済の停滞を打破する時だ。
 大企業には、自社の賃上げとともに、系列や下請けの中小・零細企業の労働環境の改善への配慮を求めたい。大手が自社のベア実現で中小・零細を踏み台にするような事態は絶対にあってはならない。原材料高に伴う納入価格の値上げには一定の理解が進むが、中小・零細側の従業員の賃上げに伴うコストアップに冷淡な大企業があるという。これでは、社会的責務を果たしたと言えない。
 企業には500兆円の内部留保が積み上がる。経営者が日本経済の成長を見通せず、投資を控えているのが要因だ。旺盛な新規事業がないと経済成長が鈍化し、賃金は上がらない。すると従業員の購買意欲は高まらず、貯蓄を優先して低価格商品が重宝される。政府の経済対策と日銀の金融政策は長年、この悪循環の対処に追われてきた。
 本格化する春闘で、大手の経営者は賃上げを巡る環境を総合的に判断し英断を示してほしい。従業員の意欲を高め、生産性を向上させ、企業の社会的価値を高めることにもつながる。その後に続く中小・零細の賃上げ交渉にも好影響を及ぼすだろう。
 政府は新型コロナウイルスの感染症法上の分類見直し方針を決めた。ウィズコロナの地域経済の本格回復を軌道に乗せなければならない。ロシアの経済制裁に伴う資源高やサプライチェーン(供給網)の不全など、企業経営の不安定要因は多いが、停滞を乗り切るのは従業員の知恵と活力であることに異論はなかろう。
 労働組合の方針も問われる。連合は5%程度の賃上げを求める。28年ぶりの高い要求水準だが、総務省が発表した昨年12月の全国消費者物価指数は前年同月比4%増で、41年ぶりの伸び率だ。物価上昇に賃金アップが追いつかない事態を避けたるため、経営者と労働者の双方が知恵を出したい。非正規雇用が増加する中、労働運動のあり方も見直す余地がある。経済を上昇機運に乗せるため、いまほど労使の連携が必要な時期はない。

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