教員確保へ官学タッグ 仕事の魅力、高校生に発信 静岡県内大学×教委

 公立学校の教員採用試験の倍率が低下している現状を受け、静岡県内の教員養成大学と地元の教育委員会が連携して教員志望者を増やす試みが始まっている。静岡大教育学部は2022年度、県教委などと共に高校生対象の教職セミナーを開催した。少子化で高校生の全体数が減少傾向にある中で、教員を志して教育学部に進学する生徒を増やすため、教員という職業の魅力発信に力を入れている。

公立小中学校の現役若手教員を招いた高校生向けの教職セミナー=21日、沼津市
公立小中学校の現役若手教員を招いた高校生向けの教職セミナー=21日、沼津市
県内公立学校教員採用試験の実質倍率
県内公立学校教員採用試験の実質倍率
教員を目指す学生の支援策を説明する熊倉啓之学部長=18日、静岡市駿河区の静岡大
教員を目指す学生の支援策を説明する熊倉啓之学部長=18日、静岡市駿河区の静岡大
公立小中学校の現役若手教員を招いた高校生向けの教職セミナー=21日、沼津市
県内公立学校教員採用試験の実質倍率
教員を目指す学生の支援策を説明する熊倉啓之学部長=18日、静岡市駿河区の静岡大


 21日、静岡大教育学部が県教委と連携して沼津市で開いた高校生向け教職セミナーには、教員の仕事に関心を持つ県東部の高校1、2年生とその保護者の約30人が参加した。県教委事務局の職員が教員免許の種類や採用試験の仕組みを説明したほか、県東部の小中学校で働く現役若手教員と県東部出身の教育学部生が登壇し、教員を目指した理由や仕事のやりがい、学生生活の状況などを語った。大学側も、在学中から子どもと関わる機会を持てる学生のボランティア活動や、教員採用試験をサポートする教職支援室の体制などをアピールした。
 静岡大は22年7月のオープンキャンパスでも静岡市を含む3教委と連携して、教育学部の見学にきた高校生を対象に講座を開催。1月28日にも、今月21日と同様の講座を浜松市で市教委と共に開く。
 熊倉啓之学部長は教育委員会と連携した学生募集について、「学校現場の最前線で子どもと関わる現役教員を招いて話を聞ける機会は貴重。生の声や体験を聞くことで、高校生の教職への関心を確信につなげたい」と話した。

「3倍」下回る年も 県内小中
 県教委が昨年実施した2023年度教員採用試験のうち小中学校の実質倍率は、小学校が3.13倍、中学校が5.01倍だった。特に校種別で免許取得者が少ない小学校では採用試験の倍率が低い傾向があり、県と静岡、浜松両市全てで「教員の質の確保に影響が出かねない」と言われる3倍を下回る年も出ている。
 静岡市の小学校は17年度採用で4倍台だった実質倍率が、22年度採用で2.19倍まで低下した。市教委教職員課は要因について「例年の受験者数が大幅に変わらないのに対し、団塊世代の大量退職や特別支援学級の増加で採用数が増えたため」と説明する。市は静岡大のほかに教育学部を持つ常葉大とも、学生や高校生対象のガイダンスに取り組んでいる。
 浜松市は優秀な学生の確保を目的に、21年度採用から大学推薦を導入した。東海地方を中心に全国で広報活動を行い、県外からの呼び込みにも力を注ぐ。市教委教職員課は「地元出身者以外でも、教員への熱意を持つ人に志望してもらいたい」とする。
 教員不足の現状を受け、国が教員免許更新制を廃止したほか、中教審も民間企業の採用に比べて実施時期が遅い教員採用試験の前倒しを昨年12月に答申した。23年度から地方公務員の定年延長も控え、教員採用を取り巻く環境は変化している。県教委義務教育課の担当者は「少子化の進行で教員定数が減るため、新規採用数も緩やかに減少する見込み。教員の質確保のため一定の倍率を維持できるよう、募集に力を入れたい」とする。

静岡大教育学部長 熊倉啓之氏 子どもと関わる機会 後押し
 教員採用試験の倍率低下を受け、文部科学省は全国の教員養成大学に教員就職率向上を求めている。静岡大教育学部の熊倉啓之学部長に、学生の現状や今後の教員採用制度への意見を聞いた。
 ―教育学部生の教員就職の状況は。
 「2022年3月卒業生の教員就職率は非正規を含め約62%。過去最低の前年からは回復したが全国平均より低く、特にここ5年ほどは低下が著しい。民間企業の就職だけでなく、教員と地方公務員を比べて一般の公務員を選択する学生もいる。『教師=ブラック』というイメージが実態以上に社会に強く染みついていると感じる」
 ―学部の取り組みは。
 「従来は教育全般に関わる人材育成を掲げていたが、教員養成に対する国の要請が強まり、16年度に教員免許取得を卒業要件としない『ゼロ免課程』を廃止した。入学時から教員を全く志望していない学生も一定数いたため、入試で教職への関心を評価する目的で、21年度から一般選抜に小論文を導入した。22年度には学校推薦型選抜で教員になる強い意欲を持つ生徒の特別枠も増やした」
 「学生に教職の選択に影響した要因を聞くと、最も多いのが教育実習、2位が小中高で出会った教員、3位が家族や親戚の姿勢だった。子どもと関わる経験が学生の教員志望を後押ししているため、学校支援ボランティアや学習支援など、実習以外でも子どもと関わる活動を励行している。また、保護者対象の教職セミナーも開き、仕事の実態や働き方改革の状況などを説明している」
 ―文科省は昨年12月に教員養成や採用制度の改革工程案を示した。今後の環境変化をどう見るか。
 「目玉となった教員採用試験の前倒しは24年度からの実施が想定されているが、大幅な前倒しは教育実習など大学のカリキュラム全体にも影響するため、影響が少ない時期の実施を望む。また、教員就職率が低い大学の定員を見直していく案も示されたが、大学生には在学中に自身の適性を見極めて職業選択をする自由がある。民間企業を経験した後に教員になる選択肢もあり、新卒採用だけが教員の道ではない。効率重視の人材育成は地域間格差を生みかねないと危惧している。教師の使命ややりがいは昔も今も大きく変わっていない。国には社会における教員の位置付けを強く発信し、まず待遇改善から進めてほしい」

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