土石流危険渓流に盛り土 静岡県内に9カ所 7カ所は砂防未指定

 熱海土石流後の盛り土総点検で判明した静岡県内の不適切盛り土196カ所のうち、少なくとも9カ所(熱海を含む)が、下流の人家に被害の及ぶ危険性がある「土石流危険渓流」に造成されていたことが23日、県への取材で分かった。このうち7カ所は、熱海と同様に砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に指定されていない土石流危険渓流で、下流域の人家を守る目的のある砂防法とは異なる法令で対応していた。

県内の不適切盛り土196カ所
県内の不適切盛り土196カ所

 県が不適切盛り土196カ所の中で危険度の高い上位30カ所に絞って調べたところ、砂防指定地に指定されていない土石流危険渓流が7カ所あった。いずれの場所も、元々崩れやすい地質で急勾配の沢などに人為的に盛り土が造成されたことになる。土石流危険渓流は砂防指定地の指定基準に該当し、国は砂防指定地に含めるよう都道府県に繰り返し促していた。
 一方、砂防指定地に指定された土石流危険渓流は、県警が造成業者への捜査に今月着手した静岡市葵区杉尾地区など2カ所だった。
 砂防指定地でない土石流危険渓流の箇所数は今後の残り166カ所の追加調査で増える可能性がある。県砂防課は「2月中に調査を完了し、砂防法としての対応を検討したい」とコメントした。
 2021年7月の熱海土石流で崩落した盛り土が土石流危険渓流に造成されたことは22年5月に本紙が報じた。県は盛り土総点検を21年8月から同年12月にかけて実施したが、不適切盛り土の造成地が土石流危険渓流に該当するか調べていなかった。

 土石流危険渓流と砂防指定地 地盤の勾配が2度以上で下流に人家や公共施設がある沢などは自然の土砂だけで土石流が発生しやすく、土石流危険渓流と都道府県が定めている。土石流危険渓流の出口付近には、下流の人家を守るために砂防ダムが設けられる場合が多い。ダム上流域は原則として砂防指定地にするように都道府県に求められていて、盛り土などで土砂を余計に発生させる行為を規制し、砂防ダムの機能を確保している。

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