リニア・県境越えボーリング JR東海社長「慎重に検討」 実施見合わせを示唆

 JR東海の金子慎社長は18日に名古屋市で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線トンネル工事で山梨県から静岡県境を越えて実施する方針を示している高速長尺先進ボーリングについて「(水資源に対する)心配の声もいただいているので慎重に検討している」と述べ、懸念が解消するまでは実施を見合わせる考えを示唆した。
 金子社長は昨年12月の会見で、ボーリングは早ければ4月ごろ県境付近に到達するとの見込みを示していた。今回の会見では、1月末ごろから掘削を開始する工程を示した一方、県境への到達時期は言及せず「そのまま静岡県に進めることについては、いろいろ懸念があるということなのでそれを受け止める」と述べた。その上で「県の専門部会で当社の考え方を説明した上で進めたい」と話した。
 ボーリングを巡り、県は昨年12月に「県境付近の断層帯の水が抜けるリスクがある」として、計画の見直しを求める意見書を提出していた。
 国がリニア開業後の県内における東海道新幹線の停車本数増加に関する調査を始めたことについて、金子社長は「(大都市間の)輸送量についての具体的なデータを得られることになる。(県内のひかりの停車増加など)検討を深めることができる」と歓迎した。

JR東海社長一問一答

 金子慎JR東海社長が18日に名古屋市内で行った定例記者会見の主なやりとりは次の通り。
 ―山梨県から静岡県境を越えて実施する予定の高速長尺先進ボーリングの進捗(しんちょく)状況は。
 「山梨県内で1月末ごろから開始する予定。一方で静岡県内での高速長尺先進ボーリングについては、県境付近の断層帯の状況を把握するのに有益な調査なので実施したいと考えているが、心配の声もいただいているので慎重に検討している段階だ。水が流れるのが心配という声が地域にあるし、県はやめた方がいいと言っている。懸念を受け止め、当社としての考え方を説明した上で進めたいと思っている」
 ―県の専門部会で議論している田代ダム取水抑制案について、東京電力が協力する確約をどう示すのか。
 「関係者の理解を得られれば、(JR東海が)東電と協議を進めて(案を)実現させていこうというのが私たちがこれまで言ってきたやり方。適切な方法だと考えている」
 ―関係者が納得した案が実現するようにJR東海が責任を持って東電と協議するということか。
 「そう。そういう段取りで、はじめから言っている」
 ―国がリニア開業後の静岡県内における東海道新幹線の停車本数増加に関する調査を開始したことの受け止めは。
 「私たちはかねて、リニアが開業すると東海道新幹線のダイヤに余裕ができ、ひかりの増停車など静岡県にメリットのある施策が期待できると言ってきた。今回の調査で(大都市間の)輸送量の具体的なデータを得られることになると思う。活用し、さらに(施策の)検討を深めることができる」
 ―4月で社長が交代する。社長在職中の5年間、静岡県との協議をどう総括するか。
 「2021年12月の(国専門家会議の)中間報告で、導水路トンネルで水を戻せば中下流域の河川流量は維持され、影響も極めて少ないというところまで整理してもらった。報告内容を踏まえた取り組みを引き続き進める。大事なのは大井川流域の皆さんの懸念解消で、現在はプロセスの段階。方法が間違っているということではない。懸念の解消に取り組む中で静岡工区の早期着手を実現する」

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