大自在(1月16日)安全保障体制の現代化

 「中国式現代化は世界の平和と安定に貢献する。新時代の要求にふさわしい中日関係を」。王毅国務委員兼外相(当時)が日中の政財界人や有識者らが集ったフォーラムで自国優先の「現代化」を強調したのは昨年末のこと。
 中国式現代化は習近平国家主席が提唱した独自の発展モデル。欧米主導の民主主義に対抗し、党が経済や社会を全面的に指導する。社会主義強国を築くのが中国にとっての現代化であり、王氏の発言は、中国式に世界は従うべき、と聞こえる。
 こちらの現代化はどこに向かうのだろう。ホワイトハウスで岸田文雄首相と会談したバイデン米大統領は「日米同盟を現代化する」と述べた。岸田首相の手土産は新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書と防衛費の大幅増額の方針だった。
 事実上「撃たれたら米国と共に反撃する」と宣言した日本を、米国は現代化したと認めたのか。ただ、日本が平和国家として守り抜いてきた専守防衛を、過去の旧態依然の体制と評価していたなら見当違いだ。
 北大西洋条約機構(NATO)の2022戦略概念は中国とロシアの連携を「われわれの価値および利益に逆らう」と記述した。中国の明記は歴史上初めて。クリミア併合前はロシアを戦略的パートナーと位置付け、トランプ前米大統領はNATOを「時代遅れの同盟」と酷評していた。
 世界の防衛体制の枠組みは、かくも変容が激しい。安全保障上の要衝となったアジア地域を巡り各国が発信する「現代化」は自陣の利益を最優先する軍事同盟のキーワードになってきた。

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