全量戻し「実質破綻」 JR東海の先進ボーリング実施方針 川勝知事インタビュー【大井川とリニア】

 川勝平太知事は10日までに静岡新聞社のインタビューに応じ、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事でJR東海が山梨県から静岡県に向けて実施する方針を示している高速長尺先進ボーリングについて「調査の名を借りた水抜き工事だ」との認識を改めて示した上で、同社が敢行した場合、県や利水者と約束した「トンネル湧水の全量戻し」は実質破綻するとの考えを明らかにした。
 川勝知事は同ボーリングと全量戻しの関係性について「普通に考えればそう(破綻することに)なる」と述べ、「強引にするのはおかしい。JR東海の(世間に対する)信頼が厳しくなる」と、計画の見直しを求めた。
 JR東海の同ボーリングを巡るこれまでの対応は、斉藤鉄夫国土交通相が2021年12月に同社に「地域の不安や懸念が払拭(ふっしょく)されるよう真摯(しんし)な対応の継続」を指導した内容に違反するとも指摘した。
 JR東海は1月に山梨県内で同ボーリングの穿孔(せんこう)を開始し、順調なら4月にも県境に到達するとしている。静岡県有識者会議の専門部会はこの時期の実施自体に難色を示し、実施する場合でも大井川の減水対策を決めてからだと主張している。ただ、減水対策の方策として有力視される田代ダム取水抑制案について、ダムを管理する東京電力が協力するかは不透明だ。
 田代ダム案を巡っては、静岡県内の山梨工区の先進坑工事期間中の減水対策の方策として専門部会で議論が続いている。川勝知事は専門部会が出す結論を最大限尊重するとしつつ、東電が協力するという確約を得るために最終的には東電や県、流域市町で構成する大井川水利流量調整協議会での合意が必要だとの認識を示した。

 トンネル湧水の全量戻し 静岡県内のリニア工事で発生するトンネル湧水全量を恒久的に大井川に流すことを意味する。JR東海が2018年10月、県と利水者に実施を表明し、その後の国専門家会議で「工事期間中に発生するトンネル湧水を含む」と定義された。導水路トンネルにより椹島(さわらじま)地点に流す方策が有効とされた一方で、工事中に県外流出する湧水の議論が続いている。

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