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社説(1月9日)静岡県政展望 次代を切り開く選択を

 2023年は4年に1度の統一地方選が4月に行われ、身近な政治の担い手を選択する重要な年となる。静岡県内で今年予定される24の地方選挙のうち21が該当し、県議選とともに15市町で首長選や議員選が控える。静岡、浜松の両政令市長選で期数を重ねた現職が不出馬を表明し、県内政治は転換期を迎えた印象だ。次世代が希望を抱けるビジョンと実行力を持つリーダーを選びたい。
 本県人口は22年2月に360万人を割り込み、35年前の水準となった。少子高齢化による自然減と若者の県外流出に歯止めがかかっていない。新型コロナウイルス禍は東京一極集中のもろさや、国と自治体の連携の不十分さをあぶり出した。次代を切り開くポストコロナの地方創生を描かなければならない。
 感染症対策と社会経済活動を両立させる政策は至難だ。住民が首長と首長を監視する議員を直接選挙で選ぶ二元代表制は、いよいよその真価を問われることになる。
 人口減少は政令市にも厳しい現実を突き付けている。鈴木康友浜松市長の4期16年、田辺信宏静岡市長の3期12年の自治体運営は、地域の特性を生かしたまちづくりをどこまで実現できたのか。市長交代の機に検証し、洗い出した課題は新市長のかじ取りに生かすべきである。現時点で静岡市長選に新人2人、浜松市長選には新人1人が名乗りを上げている。選挙戦では、地域の可能性を引き出す活発な論戦を期待したい。
 県政の課題を解決する責務は県議会も負う。統一地方選の前半に行われる県議選は、地域の声を拾い、行政の監視と政策立案能力を備えた人材に1票を託そう。県議会での建設的な議論は地方自治の信頼を高める。
 岸田文雄政権が22年12月にまとめた「デジタル田園都市国家構想総合戦略」の5カ年計画は、デジタル技術を活用した自動運転や遠隔医療を普及させ「全国どこでも便利に快適に暮らせる社会」を目指している。ただ、デジタル化は手段であり、一極集中是正の先にどんな地域をつくるのかは自治体の創意工夫が必須だ。暮らしに直結する地方政治のリーダーには地域の未来図を示し、けん引する力量が求められる。
 よりよい県土づくりに向けて基礎自治体の市町と県は不可分の関係にある。県内に甚大な被害をもたらした22年9月の台風15号災害は、静岡市と県の連携のまずさを露呈した。川勝平太知事は県政運営4期目の折り返しを迎えるに当たり、国や自治体との連携を再点検し、防災をはじめ医療福祉、人材育成、産業振興といった喫緊の県政課題に全力を注がねばならない。
 県民の命と暮らしを守る施策は最優先である。熱海市伊豆山の土石流災害を受けて5月に施行される盛り土規制法は、県盛り土規制条例と併せ、安全安心を担保する法令として実効性が課題。激甚化する豪雨災害や南海トラフ巨大地震に向けた備えも不断の見直しが必要だ。
 コロナで傷んだ地域経済の立て直しは正念場を迎える。製造業を軸にした本県産業は、ウクライナ危機も相まってサプライチェーン(供給網)の混乱や半導体不足の影響を受けた。脱炭素化に向けた変革のスピードも速い。産業構造の転換について一層強力な施策が必要だろう。
 リニア中央新幹線建設は山梨、長野両県工区のトンネル工事が本県に向かって進められ、JR東海は4月にも山梨側で県境を越えた高速長尺先進ボーリングを実施する意向だ。ただ、ボーリングであっても地下水の県外流出の懸念は拭えず、専門家の会議や県の理解がないままの見切り発車は許されない。東京電力田代ダム取水抑制案を巡っては流域市町と県との認識の相違もうかがえる。流域住民が納得できる解決策を導くよう慎重な協議が必要だ。

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