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聖地巡礼 静岡県西部にファン続々 「ゆるキャン△」に「どうする家康」起爆剤と期待

 アニメやドラマの舞台を巡る「聖地巡礼」を目的に、静岡県西部に多くのファンが訪れている。特に人気を集めるのは、女子高生がソロキャンプを楽しむ姿を描いた漫画「ゆるキャン△」シリーズ。ファンは物語をなぞるように歩き、作品の世界に浸る。2023年は大河ドラマ「どうする家康」が放送される。徳川家康ゆかりの西部地域は、コロナ禍で落ち込んだ観光需要回復の“起爆剤”として期待が大きい。「ゆるキャン△」の「食」の聖地や、開館が迫る大河ドラマ館を巡った。

藤田屋=2022年12月中旬、浜松市北区細江町
藤田屋=2022年12月中旬、浜松市北区細江町
日本茶きみくら本店=2022年12月中旬、掛川市板沢
日本茶きみくら本店=2022年12月中旬、掛川市板沢
四代目近江屋=12月下旬、浜松市西区雄踏町
四代目近江屋=12月下旬、浜松市西区雄踏町
「どうする家康」の大河ドラマ館。奥は浜松城
「どうする家康」の大河ドラマ館。奥は浜松城
藤田屋=2022年12月中旬、浜松市北区細江町
日本茶きみくら本店=2022年12月中旬、掛川市板沢
四代目近江屋=12月下旬、浜松市西区雄踏町
「どうする家康」の大河ドラマ館。奥は浜松城


浜松市、ロケ地支援強化 「誘客の新たな切り口」
 浜松市はアニメやドラマの「聖地」を前面に出した観光誘客を目的に、ロケ地支援に力を注ぐ。2022年度の支援数は11月末現在で218件と、既に年間最多を更新した。取り組みが評価され、2年連続でジャパン・フィルムコミッション・アウォードにも輝いた。
 市は「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」23年版でも、「ゆるキャン△」「エヴァンゲリオン」の聖地認定を受けた。国内外から注目されるネット小説原作のアニメ「夢見る男子は現実主義者」(23年放送予定)のモデル地にもなるなど、勢いは止まらない。
 観光庁などによると、インバウンド(訪日客)の10.2%は「聖地巡礼」を目的に来日し、日本アニメの世界市場規模は3兆円に迫る。市の担当者は「聖地づくりは浜松を訪れてもらう新たな切り口。おもてなし態勢を整え、生涯の顧客につなげたい」と話す。

①藤田屋(浜松市北区細江町)
しっとり生地に上品な甘さ 大判焼き

 「クリームを一つ。やっぱり二つください‼」。主人公の一人、各務原なでしこがこう言って手にした大判焼きは1964年の発売から半世紀以上、地元で愛されている。 photo02 大判焼きを作る藤田屋の藤田楠雄さん
 しっとりした生地が自家製のあずきとクリームの上品な甘さを際立たせる。9月中旬から6月中旬までの期間限定販売。2代目の藤田楠雄さん(74)は「手を抜かず、気に入った材料だけを使う」と語る。
 「ゆるキャン△」効果は絶大。国内にとどまらず、中国、アメリカなど海外からもファンが訪れるほどだ。取材中もカメラ片手に台湾からの観光客が―。「『ゆるキャン△』が好きで来ました」と声を弾ませ、作中と同様に2個買っていった。

②日本茶きみくら本店(掛川市板沢)
濃厚なクリームが調和 抹茶ティラミス

 主人公の志摩リンが年末に訪れたのは落ち着いた雰囲気の茶寮。大きな窓からは庭園を眺めることができ、緑に癒やされる。 photo02 日本茶きみくら本店の抹茶ティラミス
 注文したのは抹茶ティラミス。真っ白なマスカルポーネチーズのクリームと、県産抹茶の鮮やかな緑の対比が美しい。抹茶は提供する直前にたっぷりと振りかけている。濃厚でなめらかなクリームの舌触りと抹茶のほろ苦さが調和する逸品だ。
 石川裕紀子店長は「以前は女性客が多かったが『ゆるキャン△』の影響で客層が多様化した。男性客が増えていて、登場人物のようにバイクで訪れる人も多い」と効果を実感している。

③四代目近江屋(浜松市西区雄踏町)
甘い風味 口溶けも軽く すっぽんサブレー

 「浜松はうなぎだけじゃねぇ」―。主人公たちからキャンプ土産の一つとして「すっぽんビスケット」を受け取った野外活動サークルの部長大垣千明は、スッポンの形をした菓子を両手にうなった。 photo02 四代目近江屋のすっぽんサブレー
 モデルとなったのは1916年創業の老舗菓子店が手がける「すっぽんサブレー」。実際にスッポンエキスを使った看板商品で、75年に誕生した。さくさくと食べ進めると、甘い風味が口いっぱいに広がる。口溶けが軽いので何枚でも食べられそうだ。
 「ゆるキャン△」登場後は「全国から客が来るようになった」と高田修平代表(40)。「地元雄踏の良さを知ってもらうきっかけになれば」と期待する。

④大河ドラマ館(浜松市中区元城町)
22日プレオープン 「葵の御紋」広場に描く

 「葵の御紋」を描いた広場が、ひときわ目を引く。「どうする家康」の放送に向け、浜松市が中区の元城小跡地に整備した大河ドラマ館は22日のプレオープンを待つばかりだ。浜松城天守閣の改修工事も終わり、準備は整った。 photo02 旧元城小跡地で準備が進む「どうする家康」の大河ドラマ館。浜松城(奥)から広場に描かれた徳川家の家紋「葵紋」を見ることができる12月下旬、浜松市中区(許可を得て静岡新聞社ドローンで撮影)
 ドラマ館が建つ地は徳川家康が青年期などの17年間を過ごした浜松城の一部とされ、石垣や二の丸御殿などの遺構が発掘されている。館内ではドラマの世界観を紹介するほか、歴史を伝える資料として石垣は実物で、二の丸御殿はVR(仮想現実)などで展示する。
 光沢感のある黒色に仕上げた外観は「音楽のまち」を象徴するピアノをイメージした。東京五輪の選手村で使われた地元の天竜材も活用している。
 グランドオープンはドラマの舞台が浜松に移る時期の3月18日。2月末までのプレ期間は、家康を題材にした歴代の大河ドラマ24作にスポットを当てた展示を行う。家康が天下統一の足がかりとした浜松。静岡市や愛知県岡崎市など他の「ゆかりの地」と連携し、全国への情報発信を強める。いざ、出陣―。

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