地域の未来懸け論戦 県民の選択は 統一地方選2023しずおか

 第20回統一地方選は4月9日と23日に投票が行われる。県内は県議選と静岡、浜松両政令市など6市町長選、浜松、沼津、富士など14の市町議選の計21選挙を予定している。前回からいずれの選挙も定数の変更はない。両政令市トップが同時期に交代する見通しで、ポストコロナ時代の地域の将来を決める論戦が展開される。現時点で2023年に予定される国政選挙はないが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関わりや防衛費増税など、国政の議論が地方選挙にどう影響するかも注目が集まる。23年は統一選以外に焼津、南伊豆、伊東の各市町議選も行われる。

統一地方選スケジュール
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静岡市長 「ポスト田辺氏」に2新人
 静岡市長選は4選出馬に意欲を示していた現職田辺信宏氏(61)が一転、不出馬を表明したことで「ポスト田辺氏」を巡る関係者の動きが活発化した。立候補を表明しているのは、自民党県議山田誠氏(60)と元副知事難波喬司氏(66)。いずれの陣営も選挙戦に向けた態勢構築を急ぐ。
 山田氏は2022年11月上旬、いち早く出馬を表明した。市政運営に「企業経営を取り入れ投資を呼び込む。選ばれるまちを目指す」と訴える。災害やデジタルトランスフォーメーション(DX)に「強い静岡」、子育てや障害者に「やさしい静岡」を都市の将来像に掲げる。
 推薦を依頼した自民党静岡支部は「不支持」を決定したものの、「出馬の意思は変わらない」との姿勢を崩していない。静岡市議3期、県議5期の経験を生かし、企業・団体、自治会への訪問を重ねて支持拡大を目指している。
 難波氏は副知事を22年5月まで2期8年務め、熱海市土石流やリニア中央新幹線を担当する県理事を担った。県を退職後の22年11月中旬、市長選への出馬を表明し、「開かれた市政」「信頼と共鳴の市政」などを目指す決意を新たにした。
 国土交通省技術総括審議官の時代から港湾行政に精通。清水区の港湾企業などが擁立に動いた。田辺市政に近かった有力経済人が後援会長を務める。市議会では、最大会派自民市議団、第2会派創生静岡、連合系会派志政会が支援し、自民の市内4支部が難波氏推薦を決めた。
 自民以外の主要政党に目立った動きは見られない。公明党は難波氏の支援要請を受け、対応を検討中。共産党は独自候補の擁立を否定していない。立憲民主、国民民主の両党は様子見の状態。

浜松市長 中野氏の対抗馬 模索も
 浜松市長選は現職鈴木康友氏(65)が4期での退任を表明し、16年ぶりに市政の新たなかじ取り役を選ぶ選挙になる。2022年11月には自民党と市内経済界の後押しを受け、前総務省都道府県税課長の中野祐介氏(52)=同市出身=が無所属での出馬意向を表明した。共産党は無投票阻止に向け、市民団体と連携して対抗馬擁立を検討しているが、具体化はしていない。
 鈴木市政では対立の立場を取ってきた自民党と市内経済界が市長と市議会の「ねじれ」解消をもくろみ、複数候補の中から、地方行政に精通し、国とのパイプ役として期待できる中野氏の擁立を決めた。両者の歩み寄りを象徴するように、経済界に影響力を持つ大須賀正孝ハマキョウレックス会長が後援会長、市議会自民系会派の重鎮・柳川樹一郎氏が選対本部長に就いた。
 鈴木氏は中野氏について「政策の継続性という点で、最もふさわしい後継候補」と実質的に後継指名した。中野氏は自民党本部の推薦を受け、自民党議員の後援会や自治会の集まりに精力的に顔を出し、知名度向上に努めている。今後は公明党や連合など幅広く支援を求める方針だ。

富士宮市長/市議(定数22) 4選を目指す現職
 4選を目指す現職の須藤秀忠氏(75)は昨年8月に記者会見を開き、出馬を表明した。現時点での正式表明は須藤氏のみだが、市議の中で対抗馬擁立を模索する動きがある。
 須藤氏は「コロナ禍でブレーキがかかった事業をそのままにできない」と出馬を決めた。市内全域に網羅した後援会組織に早い段階で意向を伝えて態勢を整えた。浅間大社周辺の整備事業を中心に世界遺産富士山の恵みを生かした品格あるまちづくりの推進などを掲げる。市議会が市民への周知など特別な配慮を求めた仮称・郷土史博物館構想を巡っては2023年度当初予算に関連費を盛り込まない考え。「もう少し時間をかけて、理解してもらえるよう説明していく」と構える。

小山町長/町議(定数13) 池谷、込山両氏の再戦か
 2期目を目指す現職の池谷晴一氏(72)と、通算3期目に挑む元職の込山正秀氏(74)が立候補を表明した。4年前に接戦を演じた両氏が立場を入れ替えて再び激突する可能性が高い。
 池谷氏は自身の町政運営によって「町民の幸福度は高まっている」と実績を強調する。込山氏は「池谷町政は元気やスピード感がない」として「おやま再稼働」を旗印に掲げる。池谷町政の評価や今後のまちづくりの方向性が争点になりそうだ。
 池谷氏はスポーツや文化芸術振興などのソフト事業に注力して幸福度日本一を実現すると訴える。込山氏は移住定住促進や観光振興に重点を置き、在任中に着手した事業をやり遂げると主張する。

清水町長/町議(定数14) 現新 2氏一騎打ちの公算
 出馬を表明しているのは再選を目指す現職の関義弘氏(68)と、町議の山本文博氏(65)の2人。そのほかに表立った動きはなく、一騎打ちになる公算が大きい。町を二分するような大きな争点はなく、関氏の1期4年の評価が問われる選挙戦になりそうだ。
 新幹線通学や公園整備事業を推進した関氏は、コロナ禍で政策が「道半ば」と立候補を決めた。生涯健康で笑って暮らせる「笑街健幸のまちづくり」を進め、慢性化する交通渋滞解消も目指す。
 山本氏は現町政について町民との合意形成がないと批判。「町民主役」を掲げる。徳倉地区へ南小を移転し、南中と一貫校化する案を主張。都市計画道路玉川卸団地線の敷設位置再検討も訴える。

吉田町長/町議(定数13) 田村氏 7選へ〝無風〟
 7選を目指す現職の田村典彦町長(78)が、昨年11月に記者会見し、出馬を正式に表明した。現時点では他に立候補への動きは表面化しておらず、2回連続で無投票となる可能性もある。
 田村氏は2011年に発生した東日本大震災を契機に進めてきた防災とにぎわい創出を両輪で進める「シーガーデンシティ構想」のさらなる推進を掲げる。治水や防潮堤の整備、東名高速道吉田インターチェンジ周辺の交通機能強化を重点施策として「構想の具現化に向けた取り組みをできる限り実施し、そのめどを付けたい」と意気込む。
 連続当選6回は県内の現職首長で最多。多選については「最終的には有権者が決めること」と述べた。

静岡県議 1増の34選挙区、計68議席争う
 県議選は、沼津市選挙区の定数を4から3に減らし、定数1の清水町・長泉町選挙区を清水町1、長泉町1とする選挙区の変更があり、34選挙区で計68議席を争う。昨年末時点で現職、元職、新人の計77人の出馬が固まった。県議会各会派は勢力拡大や維持を目標に掲げ、選挙戦に向けた態勢構築を急いでいる。新勢力の参戦の影響も注目される。
 最大会派の自民改革会議は、昨年末までに党公認候補37人(現職34人、新人3人)が決まった。現有40議席からの増員を目標に掲げて、全選挙区で候補者擁立を進める。静岡市葵区で地元支部推薦の新人が出る。新たに単独区となる長泉町、現職が引退する下田市・賀茂郡は後継者の公認決定を急ぐ。湖西市は擁立が厳しい状況。三島市は、昨年12月の市長選対応を巡って公認決定が遅れている。同会派所属の現職が議席を占める御殿場市・小山町と、菊川市では、それぞれ自民系新人が出馬を決め、自民系候補同士の対決が確実視される。
 知事に近く、国民民主党と立憲民主党の県連所属議員らも所属する第2会派のふじのくに県民クラブは、現有議席からの上積みを狙う。現職17人のうち14人が出馬を決めた。新人は、静岡市清水区に国民公認の1人と、浜松市中区に連合静岡が推薦する2人。同会派の議員で発足させた地域政党「新政しずおか」が公募を始め、競合候補のいない「空白区」で調整を進める。立民はふじのくに所属の現職2人とは別に、浜松市東区で新人を立てる。
 公明党県議団は引退する静岡市葵区のベテランの後継の新人1人と現職4人が出馬し、全員当選で議席数の維持を狙う。今回も西部地区で候補者はいない。
 共産党は、現職1人と、浜松市中区に元職1人を立てて複数議席の獲得を目指す。このほか、会派に所属しない現職4人はいずれも出馬。静岡市葵区の元職と磐田市の新人が出馬を準備する。
 都市部で候補擁立を模索してきた日本維新の会は、静岡市駿河区と沼津市で公認候補を決め、静岡市葵区でも調整が進む。初の議席獲得を目指し、国政選挙の足掛かりにする。
 定数が1減った沼津市は、現職4人と維新の新人1人の計5人が3議席を争う激戦となる見込み。定数1の函南町は、ふじの現職と自民新人との一騎打ちが注目される。

浜松市議(定数46) 現職引退少数 中区など混戦
 浜松市は2024年1月に行政区を現在の7区から3区に再編する予定。市議選は行政区が選挙区となるため、23年4月は現行7区での最後の選挙となる。前回19年は自民党系が定数46のうち24議席を獲得する大勝を収め、07年の政令市移行後で初めて単独会派で過半数を占めた。23年も自民党系が過半数を維持できるかが最大の焦点。
 現時点で不出馬の現職は自民党系3人、非自民党系3人の計6人で、新行政区の滑り出し後を区切りと考える現職が多い。新人は既に自民党系5人が名乗りを上げ、連合静岡が3人を推薦した。連合推薦との重複を含めて立憲民主党が2人、国民民主党が1人の推薦を決定済み。共産党は4人を擁立する。特に中、南、東区は混戦が見込まれる。
 市議会は2月定例会に行政区再編後を見据えた議員定数条例の改正案を提出する予定。定数は暫定で46のままとし、4月の改選後の新たな市議会が、定数削減の是非や配分について改めて議論する。

焼津市議(定数21) 2月5日投票 
沼津市議(定数28) 4月23日投票
三島市議(定数22) 4月23日投票
函南町議(定数16) 4月23日投票
富士市議(定数32) 4月23日投票
熱海市議(定数15) 4月23日投票
下田市議(定数13) 4月23日投票
湖西市議(定数18) 4月23日投票
松崎町議(定数8)  4月23日投票
東伊豆町議(定数12)4月23日投票
南伊豆町議(定数11)8月23日任期満了
伊東市議(定数20) 9月29日任期満了

 <メモ>統一地方選 経費削減や投票率向上などを目的に、首長や地方議会の選挙を全国一斉に実施する制度。戦後の新憲法施行直前の1947年に各地で地方選が実施されたことが発端となった。今回で20回目。原則として2023年3月1日から5月31日までに任期満了を迎える選挙が対象で、都道府県と政令指定都市の首長、議員選挙を行う前半戦と、政令市以外の市と東京23区、町村の首長と議員選挙の後半戦に分かれる。全国9道府県知事選をはじめ全国で展開される選挙戦の結果は、国政運営に多大な影響を与える。

 

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