廃棄一転“味な一品” 広がるアップサイクル 食材有効活用、収益向上にも

 SDGs(持続可能な開発目標)を背景に、本来は廃棄されるはずだった食材を活用し、新たな付加価値を加えて商品化する「アップサイクル」の動きが静岡県内の食品業界で広がっている。原材料や光熱費の高騰が続く中、各事業者は利益率を向上させつつ、ストーリー性のある商品提供による発信力強化と経営基盤安定化を図る。

県内の酒蔵から提供された酒かすを使った菓子=12月中旬、静岡市葵区
県内の酒蔵から提供された酒かすを使った菓子=12月中旬、静岡市葵区

 静岡市葵区の豆菓子製造販売の「豆豊商店」は、煮詰めた砂糖でコーティングしたアーモンドに、県内の酒蔵から提供される酒かすを絡めた菓子を販売している。酒かすを有効活用した新たな商品開発を望む酒蔵と意見を交わしたことがきっかけだった。
 10月に全国旅行支援の実施に加え、訪日外国人客の個人旅行解禁など水際対策が緩和された。「日本らしい商品として外国人観光客にアピールしたい」と同社の秋山貴浩社長。「みんながコストアップで苦しい中、業種の垣根を越えて積極的に協力し、製造業全体の活性化につなげたい」と話す。
 トウガンやセロリを栽培する「さちとめぐみKファーム.」(湖西市)は、重量が規格を超えたトウガンを薄くスライスし、乾燥させて販売している。スープに入れると食物繊維を手軽に摂取できるとして、新規顧客の開拓を狙う。
 同農園ではこれまで5~8月の1シーズンで100玉以上を廃棄していたが、廃棄量をほぼゼロに抑えた。加藤幸伸代表は「肥料価格は約1・5倍に高騰し、梱包(こんぽう)やビニールハウスの材料なども軒並み値上がりしている。余剰生産分を有効活用し、少しでも収益の足しにしたい」と話す。
 廃棄食材に社会的価値を加えることで、商品の訴求力向上を図る事業者も。浜松市中区の「菓子巧房ほほえみ」は、果汁を搾った後の地元産レモンの残渣(ざんさ)を使ったケーキを製造販売する。加工には市内の障害者施設も携わっていて、店内表示を見て手に取る客も目立つ。伊熊健二取締役は「商品を通じてSDGs推進に貢献したい。他店と違う特色を際立たせながら、障害者の皆さんの持続的雇用にもつなげたい」と意気込む。

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