茶園減少 静岡県茶商理事長が方針提案 需要対応の一手、不可欠【解説・主張しずおか】
静岡県内茶園減少に歯止めがかからない。農林水産省の2022年作物統計調査によると、静岡県の茶栽培面積は21年比4・8%減の1万3800ヘクタールと、担い手が減る中で規模縮小は当面続くとみられる。ドリンク原料生産や有機栽培など、需要に適した茶づくりを通じ、静岡県基幹産業の維持発展につなげる努力が一層求められている。

全国の面積推計は3万6900ヘクタール(2・8%減)で、静岡県は減少率が最も高かった。生産量で静岡県とほぼ拮抗[きっこう]する鹿児島は8250ヘクタール(0・6%減)で、静岡・鹿児島の両県が過半を占める状況が続く。
本県の茶園は、1988年の2万3300ヘクタールをピークに減少に転じた。2017年以降、農家数減少や茶価低迷などを背景にペースが加速し、年間600~700ヘクタール減っている。
「茶園集積を進め、茶工場の経営基盤を強化する必要がある」。県茶商工業協同組合の佐々木余志彦理事長は10月に発表した「静岡茶衰退ストップ&再構築ロードマップ」の中で、効率的な茶園運営に向けた茶工場の法人化や有機栽培への転換推進を主張した。
ロードマップでは、所属農家減少で解散する茶農協の茶園を継承したり、耕作放棄地を活用したりして、有機茶園に再生するプランを提案。佐々木理事長は「有機認証取得や茶園改良は茶業者単独では難しい場合が多い」として、行政の支援の必要性を説く。
有機茶は農産物の農薬基準が厳しい欧州を中心に引き合いが強まっている。国内需要が伸び悩む中、海外輸出は活路となる。有機茶栽培で先行する鹿児島や宮崎の事例を参考にしつつ、本県も面積を広げていきたい。
有機茶園造成や、茶園管理の能率向上につながる乗用摘採機導入は、小区画やふぞろいの茶畑を整える基盤整備が前提となる。県内では需要が堅調なペットボトル飲料やティーバッグの原料生産を目的に整備が進んでいる。事業者は地権者の理解を得ながら用地を集積し、計画を進める必要がある。
県は農家の収益確保に資する茶園改良、ネギやイチゴといった複合作物栽培などを支援する「ChaOI(チャオイ)プロジェクト」を進め、採択事業者に補助金を支出している。燃油や肥料高騰で茶業現場の経営環境は一段と厳しさを増しているだけに、持続可能性を高めるには新たな一手が欠かせない。