続く休業 油山温泉2旅館「再開へ諦めず」 経営者ら砂防早期整備願う 静岡市葵区の土砂被害/台風15号3カ月

 静岡県内に甚大な被害を及ぼした台風15号から23日で3カ月。静岡市葵区の中山間地域にある油山(ゆやま)温泉の2旅館は、安倍川支流の油山川などから押し寄せた土砂で被災し休業を続けている。行政やボランティアらの支援で土砂の除去は進んだが、雨が降ると土砂が再び流れてくる時もある。両旅館の経営者は砂防ダムなどの早期整備を期待する。

土砂で埋没した状態から掘削し、本来の河道を取り戻しつつある油山川(左)=22日午後、静岡市葵区の油山温泉元湯館前
土砂で埋没した状態から掘削し、本来の河道を取り戻しつつある油山川(左)=22日午後、静岡市葵区の油山温泉元湯館前
復旧作業で高く積み上げられた土砂の山と、窓ガラスに残る浸水の跡を指す大塚祐史取締役=21日、静岡市葵区の油山苑(画像の一部を加工しています)
復旧作業で高く積み上げられた土砂の山と、窓ガラスに残る浸水の跡を指す大塚祐史取締役=21日、静岡市葵区の油山苑(画像の一部を加工しています)
元湯館 油山苑
元湯館 油山苑
土砂で埋没した状態から掘削し、本来の河道を取り戻しつつある油山川(左)=22日午後、静岡市葵区の油山温泉元湯館前
復旧作業で高く積み上げられた土砂の山と、窓ガラスに残る浸水の跡を指す大塚祐史取締役=21日、静岡市葵区の油山苑(画像の一部を加工しています)
元湯館 油山苑

 「旅館業はお客さんの命を預かる仕事。安全性が担保されなければ再開は難しい」。油山温泉元湯館の海野博揮社長(40)は今後を見据えて語った。1日2組限定のペット連れの宿として人気だった。土石流が直撃し1階を濁流が通過、宿泊客4人がヘリで救助された。海野社長と妻の加奈子さん(41)も間一髪の状況だった。
 幅4~6メートル、護岸の高さが約2メートルあった油山川は岩石や流木、土砂で埋まり、側道が川の状態になった。県は被災後、川の機能を回復させるため土砂の掘削工事を進めている。
 ただ、同温泉に行くには細い一本道のみ。大型車や重機を多数投入できず、迅速な土砂搬出は難しい。それでも県静岡土木事務所は「来年の梅雨時までに油山川の復旧を目指して土砂を搬出し、仮設の砂防ダム設置なども検討したい」との方針を示している。
 元湯館は再開に向けクラウドファンディングを実施。11月末までに544人から680万円が寄せられた。海野社長は「多くの支援に感謝し、焦らず諦めずに頑張る」と話す。
 元湯館から約300メートル下流の「油山苑」。ホタルが舞う宿として1966年の創業から家族で経営してきた。大塚祐史取締役(61)は県外から駆け付けた災害NGOや学生ボランティア、市社会福祉協議会が派遣した災害ボランティア、常連客など約200人の支援に感謝する。「ほぼ毎日10人以上が来てくれて本当に助かった」。重機で土砂を除去し、泥まみれの畳や床板、食器、家具を次々と運び出してくれる姿に勇気づけられたという。
 国の補助金などを活用し、営業再開を目指す。気になるのはやはり治山や河川氾濫防止などの安全面だ。「来年も台風は来る。被害を防ぐには行政に砂防工事を進めてもらうしかない」と大塚取締役は早期の完工を願う。

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