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養鶏業 苦境の冬 飼料高騰、鳥インフル…卵価格上昇 転嫁に限界

 ロシアのウクライナ侵攻による飼料の供給不安や円安に起因する価格の高止まりで、県内養鶏業者の経営が厳しさを増している。高病原性鳥インフルエンザの全国的な感染拡大による流通量減少がさらに鶏卵価格を押し上げる要因となっていて、飼料コスト上昇分の全てを価格転嫁できない状況に陥っている。

鶏卵1キロ当たり平均卸価格の推移
鶏卵1キロ当たり平均卸価格の推移

 採卵鶏を約7万羽飼育する東富士養鶏場(御殿場市)の10月のえさ代は、前年同月比で4割以上増えた。県の「飼料価格高騰緊急対策事業」による補助金を活用しながら、飼料会社との価格交渉を続けている。
 富士山の麓で作る鶏卵「御殿たまご」が同市のふるさと納税返礼品になるなど、ブランド化の途上にある。石田史社長(58)は「光熱費を含め、コストの高止まりは当面続くだろう。消費者に魅力を感じてもらうための工夫を凝らし、販路を広げていく」と語る。
 「いつ近隣で感染事例が出ないかと考えると気が気でない」。肉用に約40万羽を飼育する青木養鶏場(富士宮市)は消毒液噴霧器を備えるなど鳥インフルエンザ対策を強化している。渡り鳥が運ぶ高病原性ウイルスの侵入防止は容易ではなく、鶏舎の周囲に頻繁に消石灰をまき、鶏の健康状況観察を徹底する。
 愛知県豊橋市の養鶏場では感染が確認され、農場内の鶏が全頭殺処分となっている。対策費用はかさむが、青木善明社長(71)は「やれる取り組みをすべてやって、冬を乗り切りたい」と話す。
 飼料高騰や鳥インフルエンザ流行は、一定水準の価格を保ち、長らく「物価の優等生」と呼ばれてきた鶏卵の価格にも影響を及ぼす。鶏卵卸最大手のJA全農たまご(東京都)によると、11月の鶏卵卸売平均価格は1キロ当たり262円(東京・Mサイズ基準値)と過去5年の11月平均より28%高かった。需要が高まる年末期に、鳥インフル発生による流通量減少も重なったためとみられる。

 <メモ>鳥インフルエンザは、渡り鳥などが運ぶウイルス。「高病原性」の型は強い伝染力を持ち、鳥類の大量死を引き起こす。秋以降感染が広がっていて19日時点、全国21道県で発生している。養鶏場で確認された場合、感染した鶏や同じ農場内の鶏は全頭殺処分となり、市場に流通することはない。感染した鶏肉や鶏卵を食べても人には感染しない。県内では14日、浜松市で見つかった野鳥の死骸から高病原性ウイルスが初確認された。養鶏場での発生事例はない。

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