リニア工事・田代ダム取水抑制案 知事「全量戻し当たらず」 流域首長と認識に違い

 川勝平太知事は16日の定例記者会見で、リニア中央新幹線トンネル工事に伴いトンネル湧水が県外に流出する対策としてJR東海が示した田代ダム取水抑制案について、県が求める「トンネル湧水の全量戻し」の代替案にはならないとの考えを改めて示した。大井川流域市町の大半の首長は田代ダム案について全量戻しの代替案になり得ると実現に期待を示していて、認識の違いが浮き彫りになった。
 川勝知事は取水抑制について「ダムの水利権を持っていないJR東海はそもそも部外者」と述べ、同社による水資源の返還には当たらないとした。一方で「大井川に水が戻ることは(関係者)全員が歓迎している」と議論自体は否定せず、議論の場も「JR東海が提案した専門部会がふさわしい」とした。
 知事は、JR東海が4月に田代ダム案を県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で提示して以降、同様の主張を繰り返している。
 専門部会では同案について、大井川中下流域の水資源への影響を回避する方策になり得るとして実現に向けた議論が続いている。県庁で11日に開かれた専門部会委員と流域市町首長の意見交換会では、多くの首長が同案に期待を寄せる意見を述べた。ただ、「発電に必要ない水はリニア工事と関係なく大井川に返してほしい」と、川勝知事と同様に主張する首長もいた。
田代ダム案「湧水対策に値」 森副知事が知事発言を説明
 森貴志副知事は16日、川勝知事の定例記者会見の後、県庁で取材に応じ、知事が田代ダム取水抑制案は「トンネル湧水の全量戻しとは別の話」と述べたことについて「(田代ダム案は本来)流域市町と(ダムを管理する)東京電力が話し合う内容という意味」だったとし、知事の同案に対する認識は「(リニアトンネル工事で)県外に流出した水と同じ量を戻す方策として検討に値するもの」だと説明した。会見後、知事本人に発言の真意を確認したという。
 森副知事は11日に県有識者会議専門部会委員と流域市町首長の意見交換会が開かれた後の取材で、田代ダム案について「(県外に流出する)水を戻す一つの案として有効」との認識を示していた。知事と県中央新幹線対策本部長である森副知事とで同案の見解が異なっているとの記者側の指摘に対し、「共通認識を持っている」と反論した。
 一方で、「誤解が生じる表現だったことは否めない。(知事の)伝え方に問題があるのであれば、ただしたい」とした。

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