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県補助事業開始 業種の垣根越え価値創造【令和の静岡茶㉖/第7章 再生への希望②】

 茶香炉の香り漂う中で浜名湖を望み、煎茶で一服-。浜松市西区舘山寺で星野リゾートが運営する温泉旅館「界 遠州」の庭園は、地元特産工芸品「遠州綿紬」の模様をイメージし、茶の木とドウダンツツジを交互に配する。

茶の木が植えられている温泉旅館「界 遠州」の庭園。宿泊客に茶の魅力を紹介する試みを続けている=12月上旬、浜松市西区
茶の木が植えられている温泉旅館「界 遠州」の庭園。宿泊客に茶の魅力を紹介する試みを続けている=12月上旬、浜松市西区

 館内には10種類以上の茶を飲み比べできる「ティーセラー」や露天の茶風呂を設え、夜は茶のカクテルを提供する。「お茶づくし」のサービスについて、サービスマネージャーの竹野晋平さん(42)は「日本一の茶処としての特徴を生かしたおもてなしを大事にしたい」と語る。
 2021年には県中山間100銘茶協議会などと連携して茶農家参加の呈茶イベントを開始し、品ぞろえも拡充。売店の茶の売り上げを5割近く伸ばすなど、新型コロナウイルス禍でも来客を呼び込む原動力となった。竹野さんは「季節ごとに茶の魅力を楽しんでいただく工夫を凝らすことで、リピートで来館するお客さまも増えた」と語る。
 同旅館の協議会との連携は、県による助成制度「ChaOI(チャオイ)プロジェクト」で具体化した。20年開始の同プロジェクトは、茶業や観光、ITなどの業種の垣根を越えて知見を持ち寄り、商品開発や販路開拓、生産基盤強化に取り組む。
 各プロジェクトは、企業や大学などでつくる「ChaOIフォーラム」に配置される専門家によるマッチング支援や助言を通じて進行し、多様な分野からの茶業参画を促す。3年間で、掛川茶を使ったスパークリング飲料開発や茶業持続に向けたサツマイモなどの複合作物栽培、越境電子商取引(EC)サイト構築による海外販路開拓など計135件が採択されている。
 県お茶振興課の担当者は「計画の下で挑んだ事業の成果が生まれることで、プロジェクトに興味を持つ事業者も増えている」と手応えを示す。
 22年度のChaOIプロジェクト推進の県予算は、前年度より5千万円多い2億2500万円。事業者は行政の支援を得る以上、持続的な価値創造に資する開発力や販売戦略といった具体的成果が求められている。

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