物価高騰「年金だけでは生活できない」 高齢者の就労相談が増加

 40年ぶりの物価高の影響が、生活を年金に頼る高齢者世帯の家計に重くのしかかり、将来不安が強まっている。年金の増額が見通せない中、55歳以上のシニア層の就労を支援する静岡県内の相談窓口では、新たに収入を得ようと仕事を探す高齢者の相談者が増えている。

シニア層向け就労支援窓口「ネクストワークしずおか」で求人票を確認する相談者=11月下旬、静岡市役所静岡庁舎
シニア層向け就労支援窓口「ネクストワークしずおか」で求人票を確認する相談者=11月下旬、静岡市役所静岡庁舎
安藤絵理さん
安藤絵理さん
シニア層向け就労支援窓口「ネクストワークしずおか」で求人票を確認する相談者=11月下旬、静岡市役所静岡庁舎
安藤絵理さん

 「こんなに物価が高いと年金だけでは生活していけない」。11月、静岡市シニア就労支援窓口「ネクストワークしずおか」に仕事を探すために通う女性(63)がつぶやいた。電気代など光熱費の支払いに苦慮しているといい、「節約にも限界がある」と険しい表情を見せた。
 同窓口の9、10月の各月相談件数は4~6月の1・5倍ほどに増加した。警備や清掃の業種に限定して11月下旬に開催した就労支援セミナーには応募が殺到した。一ノ宮由美マネージャーは「人によって状況はさまざまだが、物価が上がって今の蓄えで老後を乗り切れるのかと不安に感じるシニア層が増えている」と説明する。
 県内の他のシニア就労支援窓口でも同様の傾向がある。浜松市ジョブサポートセンターの窓口「シニア専用デスク」の担当者は「生活が少しでも楽になればと相談に来る人はいる」と言う。
 10月の全国消費者物価指数は前年同月比3・6%上昇し、約40年ぶりの高い伸び率を示した。一方、高齢者の受け取る年金額は、物価に加えて賃金や現役世代の人口が考慮される仕組み「マクロ経済スライド」が適用され、物価上昇分ほど年金額が増えない状況は続くと見られる。
 11月の就労支援セミナーに参加した男性(69)は「物価が上がっても年金額は上がらず、老後の資金が足りるのか不安だ。体は動くので週2、3日でも働きたい」と明かした。

年金受給開始「収入あれば遅らせる手も」
 高齢者世帯の家計のやりくりについて、SBS学苑講師のファイナンシャルプランナー安藤絵理さん(静岡市葵区)に聞いた。
 ―物価高の中で家計へのアドバイスは。
 「口座引き落としが多くなり家計簿を付けない人が増えているが、家計簿で家計全体を見直してみてはどうか。今はスマホの家計簿アプリもある。何でも削ればいいとは思わないが、固定費の見直しは効果的だ」
 ―具体的には。
 「可能な人は車の保有や固定電話をやめたりするのも選択肢。年間で相当な節約になる。キャッシュレス決済のポイントも上手に使ってほしい」
 ―年金をもらい始める時期を遅らせると月々の受給額が増えるが、得策か。
 「60代の収入状況によるのではないか。65歳を過ぎても再雇用で収入があれば遅らせるのも手だ。一方、60代前半で仕事をやめて生活が大変なら前倒しでもらうしかない。平均寿命より長生きするなら前倒しは得策ではないが、寿命が分からないので結果論になる。定年後に仕事を探す人は、過去の肩書を捨てて自分に何ができるかを考えてほしい」

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