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流麗な音「復活」 右半身まひ乗り越え、6年ぶり本格ライブ 電子楽器「テルミン」竹内正実

 電子楽器「テルミン」の演奏家、研究家の竹内正実(55)=浜松市西区=が、2016年の脳出血に起因する右半身まひを乗り越え、東京、大阪で6年ぶりに本格的なライブを行った。再起を祝して集まった旧知の音楽家たちとのアンサンブルで、流麗なテルミンの音を響かせた。

バンドをバックにテルミンを演奏する竹内正実=6日夜、東京都目黒区のブルース・アレイ・ジャパン
バンドをバックにテルミンを演奏する竹内正実=6日夜、東京都目黒区のブルース・アレイ・ジャパン

 ステージ上で発症し、演奏続行が不可能になったライブから約6年。6日の東京・目黒での公演は、4人のピアニストとそれぞれ合奏する前半と、マトリョーシカ形テルミンを交えた6人編成のバンドを従えた後半の2部構成で進んだ。
 ラフマニノフやサンサーンスのクラシック曲、「ムーンリバー」など映画主題歌、日本のバンド「アリス」のメドレーなど、多彩な選曲。ジャズピアニスト国府弘子との共演では、国府のアルバムに収録された共演曲「ノスタルジア」を初めて生演奏した。
 テルミンの基本奏法は右手が音程を、左手が音量をつかさどる。音程を正確に取るためには、アンテナとの距離や手の形を繊細に変化させる必要がある。
 竹内は奏者としての再起を図るため、今年初頭から左右の手の役割を入れ替えて演奏している。オーソドックスな奏法を約5年模索したが、右手が不自由でうまくいかなかった。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の本編後コーナー「大河紀行」の音楽担当に指名されたことなどから「自分にプレッシャーをかけるつもりで覚悟を決めた」という。
 「復活」と銘打った公演前夜は「新しい翼で飛び立ってもすぐに墜落してしまうのでは」と不安にさいなまれた。演奏を終えてなお「左手でピッチを取ることはできるが、まひが残る右手の制御が難しい」との実感は残った。だが、未来に向けた手応えは得た。「道筋は見えている。課題は、体に力を入れすぎないこと。右利きでやっていた時の演奏水準に早くたどり着きたい」

 <メモ>テルミン 1920年ごろ、ロシアの物理学者レフ・テルミンが開発した。2種の高周波発振器を内蔵し、周波数差が生むうなりから人間が聴取可能な音を取り出す仕組み。垂直アンテナは音の高低を、水平アンテナは音量の大小をつかさどり、手の位置や形を変えて演奏する。シンセサイザーの元祖とも言われる。

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