大自在(12月10日)憧れ

 竹ひごの骨組みに薄い和紙を張ったゴム動力の模型飛行機を作り、広場で飛ばす。朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」でそんな場面を見て、少年時代、「ライトプレーン」と呼ばれるその模型に熱中したことを思い出した。
 番組にもあったが、飛行の安定で重要なのが翼の両端を上げる「上反角」。翼の中央で曲げる、「ニューム管」で接続した先端部を曲げる、大型機では両方を曲げる。どの程度が最適か、試行錯誤を重ねた。飛行力学の初歩を、遊びながら学んだようなものだろう。
 工作で最大の難所は、竹ひごの「曲げ」。キットでは大まかに曲げてあるが、それでも原寸大の設計図に合わせ、熱を加えて修正する必要がある。
 ろうそくの火で焦がして折れる。その悔しさを何度味わったことか。やかんの蒸気を当て、時間をかけて曲げることを覚え、だいぶ改善された。多くの機体名をいまだに覚えていることに、われながら驚く。
 番組で主人公は、大学のサークルで人力飛行機に出会い、パイロットを目指す。空への憧れといえば、磐田市で生涯を終えた浮田幸吉がいる。江戸時代、岡山県に生まれた幸吉は、表具師を生業[なりわい]とする傍ら人間が飛行する方法を研究し、1785年に竹や木の骨組みに紙を張った翼で空を飛んだとされる。
 その後移り住んだ駿府(現静岡市)でも飛行実験を行い、幕府にとがめられて、見付宿(現磐田市)に流れてきたという。先日、所用で富士山静岡空港から福岡に向かう途中、空の魅力を満喫しながら、「鳥人幸吉」に思いをはせた。

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