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大自在(12月8日)「幻の一戦」

 日本列島がサムライブルーに染まっても、サッカーのワールドカップ(W杯)はどこか“季節外れ”な感じがしていた。そんな12月の第1日曜日、大学ラグビーの早稲田大対明治大(早明戦)が行われた。冬にはやはり、楕円[だえん]球が似合う。
 1980、90年代の早明戦は、旧国立競技場に6万人超を集める一大イベントだった。98回目の伝統の一戦は、9年ぶりに国立競技場に帰ってきた。観衆約3万5千人。人気は健在だ。
 41年12月7日。明治神宮外苑競技場で早稲田大は、明治大を26―6と下した。太平洋戦争の発端となった旧日本軍による米ハワイ・真珠湾攻撃は、その翌日のことである。早稲田大ラグビー部の部長だった中村弥三次教授は日米開戦の日の講義で「戦争のニュースも重大だが、もう一つ大きなニュースがある。昨日、早稲田ラグビー部が明治を破った」と話したという。
 43年、戦局の悪化で学徒出陣が決まった。早明戦などリーグ戦は中止に。だが、水面下で試合を画策した大学がある。東京大と京都大だ。
 出陣学徒壮行会の2日前に行った非公式の試合は「幻の一戦」と呼ばれる。「戦時下のノーサイド」(早坂隆著、さくら舎)に詳しい。両大学の定期戦は22年からで、早明戦より1年早くスタートしていた。
 3年前のラグビーW杯では、日本代表が袋井市のエコパスタジアムで強豪アイルランドを撃破した。「シズオカ・ショック」と世界を驚かせた競技場で24日、創部100年の京都大が東京大と100回目の定期戦を行う。次の100年につなぐ熱い戦いを。

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